みなさん、普段「ご飯」を食べますか?
パン派の方や麺類がお好きな方、炭水化物はなるべく摂らない方、みなさんそれぞれのお好みやスタイルがあると思いますが、いつもの「ご飯」の印象が一瞬にして変わる、そんな魔法のお櫃(おひつ)があるのです!
今回は、秋田県大館市の「秋田杉」を使用した、「大館曲げわっぱ」のお櫃をご紹介します。
大館曲げわっぱとは?
秋田県大館市の「伝統工芸品」である「大館曲げわっぱ」とは、日本有数の銘木として知られている「秋田杉」を薄く剥ぎ、熱湯につけ柔らかくしたのち、曲げ加工を施した「曲物(まげもの)」です。最後に山桜の木の皮で継ぎ目を縫い合わせ(樺綴じ)て完成させます。
日本では各地でこの「曲物」が製作されていますが、2022年時点で国の「伝統工芸品」に指定されているのは、唯一この「大館曲げわっぱ」のみです。
経済産業省公式サイトより
国が指定した伝統工芸品240品目(2022年11月16日時点)
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/nichiyo-densan/index.html
大館曲げわっぱの歴史
「大館曲げわっぱ」のはじまりは、きこりが木目が平行に通った杉材(杉柾(すぎまさ))で曲物の器を作ったことがはじまりとされています。
秋田県大館市にある大館郷土博物館には、10世紀(平安時代ごろ)に製作されたと推定される「曲げわっぱ」が所蔵されており、驚くことにその形は、現在のものとほぼ同じだそうです。
その後、産業として確立したのは17世紀後半ごろで、大館城主の佐竹西家が領内の豊富な秋田杉に着目し、藩の財政を良くするために下級武士の副業として奨励し、発展していきました。
1980年には、国の「伝統工芸品」の指定を受け、秋田を代表する特産品へと成長し、現在ではお弁当箱やカップ類等、私たちの生活の中に溶け込むような商品が製作されています。
現在、大館市の曲げわっぱ製造企業は5社、「伝統工芸士」(経済産業大臣指定の伝統的工芸品の製造に従事されている技術者の中から、 高度の技術・技法を保持する方)13名の方を中心に、その伝統を守り、次の世代に引き継がれています。
大館曲げわっぱ協同組合公式サイトより
https://odate-magewappa.com/union/
私と大館曲げわっぱとの出会い
私と「大館曲げわっぱ」との出会いは、約10年前、東京日本橋三越本店に展示されていた「柴田慶信商店」さんのお櫃でした。
その第一印象を一言で言うなら 「繊細で上品でエレガント」でしょうか。
これまで使用していたお櫃も「秋田杉」のお櫃でしたが、「大館曲げわっぱ」のお櫃は、これまでのお櫃のイメージを一新させてくれました。
同じころ、母がテレビで「大館の曲げわっぱ」の特集を観ていたようで、母もこのお櫃に一目惚れ。そして数ヶ月後、母は「秋田、青森の桜と温泉を楽しむ」という表向きの旅のテーマを私に告げ、父と仲良く出掛けていきました。
約1週間後、抱えきれないほどのお土産の中に、なんと「柴田慶信商店」さんのお櫃の注文予約票が混ざっていたのです!
母曰く、「工房に行ってみたけれど、あのお櫃ちゃん大人気で一緒に連れて帰って来られなかった」と。
それから約半年後、家族全員が待ちに待った、念願のそのお櫃が、やっと我が家に仲間入りしたのでした。
五感で感じる、大館曲げわっぱの魅力
「大館曲げわっぱ」の魅力は、なんと言ってもその美しい見た目と「天然杉」の香りです。
「柴田慶信商店」さんのお櫃を初めて見た時、繊細で無垢な「白木(しろき)」の滑らかさにまず目を奪われ、それに映える「秋田杉」の年輪の細かい模様は、ただそれだけで美しいものなのだと感じました。
お櫃のフォルムもこれまで見たり使ってきたお櫃とは違い、曲線が柔らかくエレガント。手に伝わる感触も、まさに見た目通り、滑らかで柔らかい質感です。さらにお櫃の内側の底の部分と側面の接合部は、その間に米粒が入り込まないようにと、角がきれいに磨かれ丸みを帯びているのです!実際に使ってみて分かったのですが、この丸みがあることでちょっとしたストレスが全て解消されます。
また山桜の木の皮で縫い合わせた継ぎ目(樺綴じ)のデザインも控えめで上品なのですが、それがアクセントになっていて、これら全てのバランスが、ただただ美しいなと思うのです。
そして、もう一つの魅力は「天然杉」の香りです。杉の香りに癒しを感じリラックスできるのは、日本人だからなのでしょうか?
約10年前、我が家に届いたお櫃を手に取り、その新鮮な優しい香りに癒され、10年後の今も手に取るたびに、変わらない香りに癒され続けています。
我が家のお櫃を製作している「柴田慶信商店」さんは、「天然杉」にこだわり「天然杉の曲げわっぱ」を作り続けています。
この年輪の細かい模様も、高樹齢の「天然杉」にしか出せないものだそうで、「天然秋田杉」の伐採が禁止になった2013年以降は、在庫を使用したり、隣県の青森県、山形県、岩手県の高樹齢の「天然杉」を仕入れているそうです。そこまで「天然杉」にこだわるその理由は、「長く曲げわっぱが使われるために必要な材料だと考えるから」。
お手入れや取り扱いが簡単なウレタン塗装ではなく「白木」にこだわる理由も「天然杉」の効能を活かし「美味しいを届けたいから」。
重みと愛があるお言葉ですよね。
愛用歴10年!私が大館曲げわっぱを使い続ける理由
「大館曲げわっぱ」のお櫃が我が家に仲間入りして約10年が経ちました。
私がこれまでもこの先も、このお櫃を使い続ける理由は、とてもシンプルで「ご飯が美味しくなるから」です。
私はご飯が好きでお気に入りの品種がいくつかあり、炊き立てのご飯が大好きなのですが、「柴田慶信商店」さんの「白木」のお櫃に、それらの炊き立てのご飯を移して、少し待ってからいただくと、普段のご飯がさらにワンランク上の、別格の味わいに大変身するのです!
まず、お櫃の蓋を開けた瞬間の、あの香りです。
ご飯の湯気とともに届く、優しい杉の香りは、それだけで心が満たされるような気分になります。そしてこの癒しの香りは、ご飯をお茶碗によそって口に運ぶまで優しく漂い、その後は鼻からふんわり抜けていく感じです。
時間が経ってご飯が冷めても、いつまでもご飯が杉の香りを纏っているかのようです。
杉の香りの次は、艶と弾力が増したご飯です。
「天然秋田杉」の優れた吸湿性が、ほどよくご飯の水分を吸ってくれ、ご飯が艶々になります。「その水分はどこに行ったの?」と思うくらい、お櫃本体にも蓋にも水分は見当たらず、毎回「天然秋田杉」の持つ力を感じています。
そして、ご飯自体がモチモチとし、噛んでいると弾力と甘みが増しているように思います。
また、杉の抗菌効果で、一晩お櫃にご飯を入れたままにしても傷んだことはありません。(昨今の猛暑日はやったことはありません。)
冷めたご飯なのに、しっとりモチモチしていて、ほのかに杉の香りがして…。
実はこの冷めたご飯も好きだったりします。
「柴田慶信商店」さんの公式サイトのブログの中で、約35年前に購入されたお櫃を修理され、今でも大切にお使いの方がいらっしゃるという記事を拝見しました。その考え方が本当に素敵で、私の憧れの使い方です。
しっかりとお手入れをして、この方のように35年、40年と使い続けていきたいと改めて思いました。
大館曲げわっぱの使い方とお手入れ方法
大切に使ってきたお櫃も、10年経った現在は少し黒ずみがあり、日々のお手入れが本当に重要だと感じています。この経験から、長く大切に愛用するための使い方とお手入れ方法をご紹介します。(対象製品は、白木(無塗装)の製品です。)
1.使用前のひと手間
お櫃の内側の木が乾燥しているとご飯がこびりつきやすいため、使用前にお櫃の内側をさっと水で湿らせ、乾いた布巾で余分な水分を取ってから、ご飯を移すことをおすすめします。
こうすることで、においや汚れの浸透予防にもなるそうです。
2.使用後のお手入れ-汚れを浮かす
使用後は、約40〜50℃のお湯または水を注ぎ、軽く汚れを浮かします。
私は汚れ落ちとその後の乾燥のため、なるべくお湯で濯いでいます。
のちほどご紹介するクエン酸を使用したお手入れの場合は、この段階でクエン酸をお湯で溶かし、30分程おいておくと良いそうです。
3.使用後のお手入れ-たわしで汚れを洗い流す
汚れを浮かしたあとは、たわしで軽く洗い流します。この時、重曹や中性洗剤は使用しないでくださいね。使用するのはたわしとお湯または水のみです。お櫃なら、この段階で十分きれいに洗えています。
4.使用後のお手入れ-磨き粉とたわしで洗う
汚れが取れたら、研磨剤の入った磨き粉(粉クレンザー)とたわしで、白木の表面を磨くように、新しい木肌を出すような気持ちで、木目に沿って磨きます。粉クレンザーの代わりに、クエン酸を使用してもいいそうです。クエン酸は、シミ取りに効果があるため木肌を明るく保ち、お弁当箱の場合はにおいを取る効果もあるそうです。
5.使用後のお手入れ-完全に乾燥させる
洗った後は十分にすすぎ、布巾で水分をしっかりと取り、立てかけた状態で完全に乾燥させます。
この「完全に乾燥させる」ことが、私はお手入れの中で一番重要だと感じています。
完全に乾くまでには1日以上の時間が必要ですが、毎日あの美味しいご飯を食べたいと思って、連日お櫃を使用していたことがありました。これは黒ずみの原因になるそうで、私は一番やってはいけないことをやっていました。
みなさん、しっかり覚えておいてください!
1日使ったら、1日休ませてあげましょう。
「柴田慶信商店」さんの従業員の方のお手入れ方法が、公式のサイトのブログに掲載されていますので参考になさってください。
https://magewappa.com/blogs/blog/enjoy-shirakibentobox
また修理や「白木」製品をシバキ塗り(漆塗り)にする相談もできるようですので、すでにお使いの方は、よろしければこちらも参考になさってください。私はお櫃の黒ずみの磨きをお願いしようと考えています。
https://magewappa.com/pages/repair
大館曲げわっぱの商品紹介
現在、大館市には曲げわっぱを製作する企業が5社あり、「伝統工芸士」を中心に、お櫃をはじめお弁当箱やカップ、プレート、お箸等を、日々、製作しています。
私が使用しているお櫃の「柴田慶信商店」さんの公式サイトからも、素敵な商品をご覧いただけます。
https://magewappa.com/collections/allproductslist
みなさんにはぜひ一度、五感でその良さを感じていただきたいので、秋田県大館市の本店やわっぱビルヂング店、東京浅草店、日本橋三越本店、福岡岩田屋本店等でお手に取っていただけたらと思います。また全国の雑貨屋さんでもお取り扱いがあるそうなので、ぜひお近くのお店でご覧いただければと思います。
また現在は休止されているようですが、「柴田慶信商店」さんのわっぱビルヂング店では、曲げわっぱ製作体験のワークショップが開催されていたようです。小学校低学年のお子様から体験でき、丸弁当箱やパン皿が製作できるので、ワークショップが再開した際には、自分で作った自分だけの曲げわっぱを楽しむのも素敵ですよね!
それ以外にも、焼印や特別注文も可能なようですので、あなたのお気に入りの、あなただけの特別な曲げわっぱをオーダーされてみてはいかがでしょうか?
日本の伝統工芸品をあなたの生活の中に
今回は大館市の伝統工芸品、「大館曲げわっぱ」をご紹介いたしました。
みなさん、いかがでしたでしょうか?
普段「ご飯」を食べる方も、食べない方も、ぜひ一度「大館曲げわっぱ」を手に取っていただき、いつもと違う別格の「ご飯」を五感で体験していただきたい、そして「ご飯」って、こんなに美味しかったんだ!と、再発見していただきたい、そんなふうに思っています。
みなさんも日本の伝統工芸品を生活の中に取り入れ、こころ豊かに、日々を過ごしてみませんか?
ご覧いただき、ありがとうございました。
ライター:tmintchoco