人との出会い、受け継いだ伝統をつむぐ浜松の伝統織物「遠州綿紬(えんしゅうめんつむぎ)」

みなさん、「遠州綿紬(えんしゅうめんつむぎ)」と聞いて、どんなものをイメージされるでしょうか? 

「紬なら聞いたことあるけど、綿紬?」」

「あんまり聞いたことないなー」

という方が多いのではないでしょうか?

今回は浜松の伝統織物、「遠州綿紬」をご紹介します。

目次

遠州綿紬とは?

「遠州綿紬」とは、遠州地方(静岡県西部地域)で作られる伝統的な織物のことです。

日本の四季からインスピレーションを得た、”日本色”という温かみがある色使いと、使えば使うほど手に馴染んでいく、柔らかく優しい質感が特徴の織物です。

その始まりは江戸時代、農家の方の冬の時期の仕事や内職として広まり、当時は縦縞模様に織られ、野良着や生活着として人々の日常に根付いていきました。

明治時代になると、豊田自動織機(現在のトヨタ自動車)や鈴木式織機製作所(現在のスズキ自動車)による、動力で織機を動かす力織機(りきしょっき)が登場したことでさらに発展し、昭和中期にかけ、その名は全国へと広がり、遠州は三河(愛知県東部)や泉州(大阪府南西部)と並ぶ、日本三大綿織物産地となりました。

私と遠州綿紬との出会い

私と遠州綿紬との出会いは、父が愛用していたお弁当箱を譲り受けた8年前です。

「このちょっと渋めのいい味出しているお弁当箱に合う、おしゃれなお弁当包みが欲しい!」

平日はインターネット検索、休日は和雑貨屋巡りと、最後の最後にやっと辿り着いたのが「遠州綿紬」でした。

私が最初に選んだ遠州綿紬は、浜松市の「遠州綿紬ぬくもり工房」さんのハンカチです。

[ぬくもり工房さん公式サイト]

愛用歴8年の私が惹かれ続ける遠州綿紬の魅力

遠州綿紬は、決して煌びやかな派手さはないけれど、主張しすぎない存在感があり、私たちの生活にいつの間にか自然に溶け込んでいるような、そんなところが魅力だと思います。

浜松市浜北区にある、ぬくもり工房さん本店を訪ねた際、商品を手に取って、鏡で見て、使用している場面をイメージすることで、その魅力をより深く感じることができました。

その魅力の1つ目は、遠州綿紬は日本の四季を感じる色を使用していることだと思います。

それらの色は、とても落ち着いていて優しい雰囲気の中にも、ぱっと気持ちも明るくなるような色もあり、どこか懐かしいような、でも新しいような彩り豊かな色使いです。この色使いがなぜか不思議と、どんなシチュエーションにも自然にマッチすると思うのです。 

そして2つ目の魅力は、特徴的な縞模様です。

この縞模様は江戸時代に全国的に広まったそうで、ぬくもり工房さんでは日本の文化の中で育ってきた”日本の縞”を大切にされているとのことです。

そんな歴史のある縞模様は種類も豊富で、柄のネーミングも日本らしく、”夜富士”、”夕桜”、”朝ぼらけ”など、その情景が浮かび、どれもとても印象的です。無地ももちろん素敵なのですが、色使いと縞模様、ネーミングの掛け合わせで、これだけ印象深く、豊かな表現ができることに無限の魅力を感じます。

ぬくもり工房さんでは、常時150柄以上を取り扱いされているそうで、お気に入りが増えすぎてなかなか選べないのも魅力の1つですね。

これまでも、この先も…私が遠州綿紬を使い続ける理由

私が遠州綿紬と出会って8年が経ちます。

私がこれまでも、そしてこの先も遠州綿紬を使い続ける理由は、遠州綿紬は経年変化を楽しめるものだからだと思います。 

こんな風に思えるようになった経緯を紹介させてください。

私は遠州綿紬に出会う前に、フランスのアンティーク雑貨に出会いました。大好きなアンティークのお店のオーナーさんに教えてもらったのですが、フランスではファブリック(生地や織物の総称)が破れたりほつれたとしても直したりせず、それが”シャビーシックだ”と、そのまま使い続けるそうです。

”シャビーシック”とは、shabby:使い古した、古めかしい、chic:上品な、おしゃれな、落ち着いたを掛け合わせた言葉で、”古めかしくもおしゃれで上品”というスタイルのことです。

このお話しを教えてもらってから、少しずつ考え方が変わり、これまでの、汚れたりほつれてきたら新しいものをという考えから、汚れやほつれも含めた変化を楽しめるようになり、「10年後、20年後にはどうなっているのだろう?」と想像しながら商品を手に取ることが多くなりました。遠州綿紬も、その中の1つだったのです。

8年前に購入したハンカチは、大切に使ってきたつもりでもしみができ、はじめは少しハリがあった生地も少しずつ柔らな手触りになってきたように感じます。

商品や柄は一緒だったとしても、私のところに来てくれなければできなかったそのしみや手触りは、その時点で唯一無二の存在ですよね。他に替えがきかない、自分の一部と言ったら大げさですが、8年経った今、そんな気持ちで使い続けています。そして、”粋”と思えるようなしみやほつれができる日が、実は楽しみだったりするこの頃です。

そしてもう1つ、私が遠州綿紬を使い続ける理由は、この遠州綿紬ができるまでの工程を知り、こんなに多くの職人さんが時間をかけ、その誇りとあたたかい愛情がいっぱい詰まった商品を丁寧にみんなで作り上げているということ、そしてその伝統をしっかりと守り続けているということを知ったからです。

ぬくもり工房さんの公式サイトに遠州綿紬ができるまでの工程が動画で紹介されています。

みなさんもぜひご覧ください。

遠州綿紬ができるまでの工程をご紹介します。

[ぬくもり工房さんの公式Youtubeチャンネルより]

遠州綿紬が完成するまでにはいくつかの工程があり、職人さんでなければできないような作業(たくさんの糸を丁寧にまとめたり、糸を補強し布を織りやすくするための糊付け、完成直前に人の目による細やかなチェック)があり、昔ながらのシャトル織機で空気を含ませながら丁寧に織っているため、1日の生産量はわずか40m程度ということを初めて知りました。

動画を見終わる頃には、ウルウルときてしまいました。

私たちはお金を出せば、一瞬にして、簡単に商品を手にすることができるかもしれませんが、その裏にはこんな風に伝統を守り、次の世代に未来をつむぎ続けている職人さんたちのプライドや愛情、チームワーク、絆があるということを、お恥ずかしながらその時初めて知ったのです。

大変おこがましいのですが、私もこのハンカチを大切に使い続けることで、遠州綿紬の伝統を未来へつむいでいく、その一員になれたらいいなと思っています。

アレンジ方法は感性のかたまり!?私の遠州綿紬の使い方

使い勝手がいいハンカチのアレンジ方法は無限ですね。センス磨き猛特訓中の私なりの使い方をご紹介します。

ランチョンマットとして

実はお弁当包みとしては小さかったので、ランチョンマットとして使用しています。

お弁当箱の中身はともかく、お昼休憩の時間が本当に楽しみです。色合いが明るいせいか、この遠州綿紬を見て、触れていると、なぜが心がホッとし、癒され、午後ももう少し頑張ろう!と思えます。

小さなケースの包みとして

小さなケースを可愛らしく包んで使ってみました。このケースは海外製ですが、なぜかしっくりくるのですよね。「和物は和物との合わせが一番!」と思っていた私ですが、本当にセンスがないですよね。センスのいい方は、どんな場面でも和洋折衷を楽しんでいる方が多いなと思います。

フラワーベースの敷き物として

お花を生けたベースの下に遠州綿紬を敷いてみました。ちょっとヨレヨレですが、これも遠州綿紬の良さの1つとのことなので、あえてこのままで!遠州綿紬の色合いが、何となくフランス国旗の色と似ているところからこの日のテーマは、”フレンチジャポネ”。こうやって自分なりの楽しみ方を見つけていきたいですよね。

目隠し・ホコリよけとして

この木の手提げかごに、目隠しとしてふわりとかけて使っています。やはりサイズがちょっと小さくて、目隠しになっていませんが、これもご愛敬。キッチンに置いてあるのでほぼ毎日目にし、手で触れています。キッチンの空気を纏うかのようにほんのりあたたかなぬくもりがあり、ふんわりと柔らかく、遠州綿紬の特徴なのか小さな糸玉(糸結び)のようなものがポコポコとあり、この素朴な感じが木の手提げかごにマッチしていると思っています。

バッグのアクセントとして

バッグの持ち手部分にくるっと巻くだけで、なんでもない無地のバッグが一気に華やぎます!

リボンのようにアレンジしてバッグの側面につけても素敵です。バッグの中身が見えてしまって気になる時は、このハンカチでさっと隠せばOK!

大切な方への贈りものとして

日本に住んでいる友人はもちろん、海外の友人に伝統的な日本の製品を贈りたいと思った時、スリッパやハンカチ、小さなポーチやコースター等、気兼ねなく普段使いしてもらえるような物を選んで贈っています。

特に結婚した友人へのちょっとしたお祝いや手土産には、「この遠州綿紬がたて糸とよこ糸でできているように、あなたとあなたのパートナーが、これから一緒に何かを作り上げていけますように…」と思いを込めて贈っています。

遠州の魅力が詰まった遠州綿紬の商品

遠州綿紬を使った商品は、生活雑貨をメインにとても素敵なものがたくさんあります。

ぬくもり工房さんの商品を手に取ってみたい方は、浜松市の遠鉄百貨店さんや静岡市の静岡伊勢丹さんはじめ、静岡県内の雑貨屋さん等アンテナショップでお取り扱いがあるそうです。

また、ぬくもり工房さんの直営オンラインショップや楽天市場さん、LINEギフトさんからも購入可能ですので、ぜひお気に入りの商品を見つけてみてください。

そのなかでも、同じ浜松市発のROOTOTE(ルートート)さんとの機能性抜群のコラボバッグや、遠州地域の綿織物産業を支えてきた天竜杉の中でも樹齢60年以上のものだけを使用した、タペストリー壁掛棒と遠州綿紬の融合等、遠州を象徴する魅力が詰まった商品は必見です。

また、遠州綿紬の生地見本を無料で送付してくれるサービスがおすすめです。最近では企業や団体がノベルティとして遠州綿紬を使用したオリジナルの商品をお客様にお渡しすることもあるようで、お気に入りの生地を見つけて、世界に1つだけのお気に入りを作り上げるのも素敵ですよね。

そして、このようなモノそのものの商品ではなく、遠州綿紬をお部屋に使用した空間を提供されているのが、星野リゾートの温泉旅館ブランド「界・遠州」さんです。

星野リゾート界さんでは、その地域で活躍する伝統工芸の作家さんとのコラボレーションによる世界に1つしかない「和心地なご当地部屋」を1室ずつ作られているそうで、浜松市の温泉街・舘山寺(かんざんじ)温泉にある「界・遠州」さんでは「遠州つむぎの間」というお部屋を1日1室だけ提供されているそうです。

クッションや障子の一部、ランプシェード等にぬくもり工房さんの作品が使われているそうで、温泉に入る前にお部屋に入っただけで、全身が癒されそうな雰囲気ですよね。

浜松に行かれる際には、宿泊地の候補としてみてはいかがですか?

[星野リゾート界・遠州さん公式サイト]

手にとった人にぬくもり伝わる遠州綿紬

今回は浜松の伝統織物 ”遠州綿紬”をご紹介いたしました。

みなさんいかがでしたでしょうか?

ぜひ、あなたのお気に入りをみつけていただき、一度、手に取ってみてください。

手に取った人にだけ、静岡のあたたかいぬくもりが伝わります。そして、その魅力にどっぷり浸かってください!

ご覧いただき、ありがとうございました。

ライター:tmintchoco

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