源右衛門窯 陶磁器の里 有田で独自のスタンスを守り続ける気骨と魅力

日本における磁器発祥の地、佐賀県有田。
百花繚乱、さまざまな陶磁器メーカーがにぎわう土地で、独自の立ち位置を守り続けるブランドがあります。

その名は、源右衛門窯(げんえもんがま)。

この記事では創業以来260余年、人々の心をつかんで離さない源右衛門窯の魅力を探ります。

目次

有田焼の歴史

有田焼の歴史は古く1616年(元和2年)、日本で初めて磁器作りを成功させたことから始まります。磁器は陶器とは原材料が異なり、陶石から作られます。焼成温度は1,200〜1,400度と陶器より高熱。

そのため、陶器と比較して吸水性は低く、非常に固いのが特徴です。

有田で生産された磁器は伊万里港に集められ、国内外へ運ばれました。有田焼を「伊万里焼」(いまりやき)とも呼ぶのはこのためです。

有田焼は当初、地元にある泉山陶石が使われていました。ですが、17世紀半ばには熊本の天草陶石に変わります。天草の陶石を使った焼き物は、仕上がりが白く美しく、扱いやすいのが特徴です。

有田焼の代表的な様式は3つ。

「古伊万里」、「鍋島」、「柿右衛門」です。

有田には名工が多く、重要無形文化財(いわゆる人間国宝)を輩出しています。今泉今右衛門(13、14代)、酒井田柿右衛門(14代)、井上萬二。

皆さんもどこかで耳にしたことがあるのではないでしょうか?

有田の有名な窯と特徴

「赤絵」「濁し手」で有名な柿右衛門、「色鍋島」「墨はじき」の今右衛門、精緻な白磁、天才的なろくろの手技を持つ井上萬二。他方には宮内庁御用達のセラミックメーカー 香蘭社。

このような巨星ばかりの有田で、ファンを魅了し続ける源右衛門窯。

いったい、源右衛門窯のなにが人を惹きつけるのでしょうか?その人気の秘密は「日常使い」と新旧のバランスにありました。

源右衛門窯の魅力

ろくろから絵付けまで、一貫して自社で行う源右衛門窯。特徴的なのはデザインです。

館林源右衛門(6代)は、ヨーロッパ訪問中に日本から海外に輸出された古伊万里を見る機会がありました。

その技術と完成された美に打たれた彼は、古伊万里様式を現代風にアレンジすることを決意。そしてアメリカのティファニー社と企業提携し、「Tiffany 源」ブランドを発表します。

磁器作りという伝統を重んじる世界にいながら、時代を先取りする嗅覚を持っていた6代目源右衛門。この先進性は佐賀人気質と言うべきでしょうか。

森永製菓の創業者である森永太一郎氏も佐賀県の陶器問屋生まれです。

古風な柄、現代的なデザイン

源右衛門の面白さは意匠にあります。

古伊万里を思わせる古風なもの、斬新なもの。新旧のバランスが絶妙です。

例えば大皿の「古伊万里風松絵」。

お正月料理にぴったりな、伝統を漂わせる柄ですね。

同じ大皿でも、「染付市松紋」は皿全体に広がる市松模様がチェス盤のようです。朝食のトースト、ハムエッグをのせても違和感はありません。

「染錦縁茄子」は周囲をなすで囲み、中心部分が空白のユニークなデザイン。海外メーカーの新作と言われても信じてしまいそうなアイディアです。この斬新な発想力の源は、佐賀県という土地に隠されていると思います。

佐賀県の食文化と共に発展した源右衛門窯

みなさんは佐賀県にどんなイメージをお持ちですか。

陶磁器、吉野ヶ里古墳、唐津が有名ですね。実は、佐賀県は優れた食材の産地でもあります。お米、大豆、れんこん、玉ねぎ、アスパラガス、魚介類に緑茶。

佐賀牛は銘柄牛の中でも優れた品質を誇る黒毛和牛で、九州の有名焼肉店、ステーキ店を縁の下で支えています。

そして、生産者と消費者の距離が近いのが佐賀県。日常生活で使う「食卓のやきもの」を販売している源右衛門。

豊かな食材を生み出す肥沃の大地は、源右衛門窯の物づくりに影響を与えているはず。

嬉野茶の緑、佐賀牛の赤と茶色、アスパラガスに代表される多種多様な野菜。自然の食材が映えるように作られている、そう感じます。

佐賀県の独特な食文化

古くから海外への玄関口として開かれていた福岡と長崎。その中間に位置する佐賀県も海外からの影響を色濃く受けています。

九州でも指折りの牛肉を産出しているのはその一例。

嬉野で作られる嬉野紅茶。佐賀名物の「ごどうふ」も大陸由来のものです。

源右衛門の食器が和洋中どの料理にでも合う理由は、こんなところにあるのかもしれませんね。

私が源右衛門にはまった理由

私は佐賀県のお隣、福岡県の出身です。九州には陶磁器の名産地があるため、食器にこだわりを持つ人が多い土地柄です。

かくいう私の両親は源右衛門窯のファン。源右衛門窯の頒布会に入り、少しずつ食器を増やしていました。

ですが、子だくさんの家庭で高価な食器をそろえるのは至難の技。

こんな時、九州では「有田陶器市」が活躍します。

有田では、毎年4月29日から5月5日に陶器市が開催されます。有田の一大イベントで、この時期には列車が増便されるほど。

有名無名、大小さまざまな窯、陶芸作家の作品が一か所に集められ、販売される「お祭り」です。

交通規制をされた道路にはたくさんのテント、かごに盛られたお買い得品、リュックサックを背負った人々があふれかえります。

才能ある若い陶芸家を発見する楽しみで訪れる人もいますね。ですが、多くの人が手に入れたいと思っているのは今も昔も「B級品」ではないでしょうか。

一流陶磁器メーカーの正規品はお値段が張りますが、厳しい検品作業で取り除かれた製品は安く買えます。もちろん、「B級品」といっても割れた物、大きなキズがある物は販売されません。

ちょっとした色むら、高台のへこみ、目を凝らさなければ見えないキズ。

そのような「欠点」があるものの、家庭で使うには問題がない品物です。人気があって当然ですね。

私は毎年、両親に連れられて有田陶器市に出かけていました。大人は「B級品」が目的。しかも、早い者勝ちです。

小さな子供は足手まといですね。

両親は子供たちにおこづかいを渡して、別行動。私はいつも100円玉をにぎりしめて姉妹たちと陶器市を回っていました。

治安が良い有田、当時は子供だけで回ってもトラブルに巻き込まれることはありませんでした。

いい時代でしたね。

昭和40年代、50年代の有田陶器市は、300円あれば子供が時間をつぶすことができました。生まれて初めて買った磁器は、小さな工房が作ったうさぎのつまようじ入れ。60円です。

普段はセット販売される箸置きなども、この日はバラ売り。100円以下でかわいい動物の形をしたものを探すのはとても楽しかったです。

故郷から遠く離れて

陶磁器に慣れ親しんだ生活を送っていましたが、結婚後に転機が訪れます。

北日本に引っ越すことになったのです。

九州で生まれ育った者にとって、苦しい経験でした。

気候や生活習慣、言葉、食材、マナーが異なる土地での生活は、緊張の連続です。

疲れて、生活を楽しむことができない状態にありました。

そんなある日、ふらっと入った百貨店で私は源右衛門に「再会」します。

源右衛門との「再会」

ちょっとした気分転換のつもりで入ったデパートのキッチンフロア。さまざまな有名メーカーの鍋や食器が並ぶきらびやかな空間でした。

その一隅に源右衛門窯コーナーがあったのです。

独特な赤と藍色、梅の模様。

特徴的なそのデザインは、遠くから見てもわかります。源右衛門窯は古くからあるデザインを大切にしています。

私が最初に目にしたのは飯茶碗で、20種類ほど並べられていました。その中に、私が子供の頃に使っていた茶碗と同じものがあったのです。なつかしさで鼻の奥がツンとしましたね。

百貨店の源右衛門窯売り場は大きなものではありませんでしたが、私の知っているデザインはたくさんありました。

コーヒーカップ、小皿、どれも思い出と結びついている物ばかりです。しばらくは商品を手に取って眺めていました。

源右衛門の飯茶碗は、他メーカーの物とは異なり、丸みを帯びて深いのが特徴です。両手で持つと手のひらになじむ形で、ほっとします。

北国で暮らして気づいたのは、九州地方では魅力的に見える白磁や青磁が寒い地域では冷たく感じられること。

白磁のつるっとした肌、青みがかった釉薬。

完璧なフォルムが、人を寄せ付けない印象を与えます。

源右衛門窯の誇る多種多様な柄は、白磁の冷たさを中和する効果があるようです。

染付の藍色、赤絵、七宝焼きを思わせる透明感を持った緑。清潔感のある白に映える、鮮やかな色彩が磁器にあたたかみをあたえています。

私はこの日、源右衛門窯の魅力を再確認しました。

どこにいても手に入る利便性、扱いやすさが魅力

源右衛門窯の製品は全国の百貨店で取り扱われています。

公式サイト、楽天市場でも購入できるため、とても便利。

源右衛門窯のオンラインショップは品ぞろえが豊富で、見ているだけで楽しいのでおすすめです。

源右衛門窯オンラインショップのURL https://www.shop-gen.com/

日本の「アーツ・アンド・クラフツ運動」?源右衛門窯の目指すもの

古伊万里の伝統と技を守りながら、新しいものを作り続ける源右衛門窯。

私たちの生活に彩りを与えてくれる存在です。

その企業理念を見ていると、ウィリアム・モリスの起こした「アーツ・アンド・クラフツ運動」を思い出します。

19世紀末のロンドン。

大量生産の粗悪品があふれかえっていた社会に、「生活と芸術の一致」を提唱し、一石を投じたウィリアム・モリス。

アール・ヌーヴォーに影響を与え、数々の美しいインテリア製品を生み出しました。

源右衛門窯が連携したティファニー社は創業者の息子、ルイス・C・ティファニーがガラス工芸家として名作を残している、米国アール・ヌーヴォーの第一人者。

ティファニー家の美的感覚と理念は、源右衛門窯と相通じるものがあったのでしょう。

入手しやすい、幅広い価格帯

源右衛門窯の魅力はなんといってもお手頃な価格です。

飯茶碗ひとつとっても、価格に幅があり4,400円〜16,500円。

「本当はこれが欲しいけれど、高いからこっちにしようかな?」

「今はこれでいいかな?」

ライフステージや予算に応じて商品を選べます。

ちょっとがんばれば購入できる―。

源右衛門窯はそんな夢を与えてくれる存在です。

みなさんも、源右衛門窯の製品を手に取って生活をゆたかにしてみませんか?

ライター:M.Ishizuka

当メディアではライター様を募集しています
当ブログは日本のものづくりを応援しています。「国内メーカーの国産製品・サービス」について愛情たっぷりに語って頂けるライター様を募集中です。
記事のシェア
目次