長年愛され飽きさせない座り心地 日本の誇り高き名作「NychairX」

皆さんはこの日本発のデザイン家具である「NychairX(ニーチェアエックス)」のことはもうご存知ですか?

デザイン家具と聞くと、一般的には手の届きにくい、おしゃれな人たちや専門家たちの世界のモノと、気が引ける方も多いのではないでしょうか。

日本を代表すると言っても過言ではないほど、長年に渡り世界からも愛され歴史のある、日本人デザイナーによって作られたNychairX。

当時の、日本人デザイナーの想いと暮らしの提案が見事にカタチになった名品です。

ぜひその素晴らしい発想と想いに感動してください。

目次

NychairXの生みの親

この椅子のフォルムやネーミング、佇まいから想像するに、どこか北欧の家具デザイナーによって作られたものではないのかという先入観を持ってしまいませんか?

大正に生まれ、昭和を駆け抜け、平成を生きた日本人家具デザイナーによって作られた椅子だと知ると、なんとも誇らしい、嬉しい気持ちになってしまいます。

NychairXを生み出したのは、新居猛さん(にいたけし)という、四国徳島県に生まれた家具デザイナーによって作られました。

剣道具の製造業を営む家庭に育ち、デンマークの家具に関心と興味を抱いたことで、自身でも木工の技術を学び、1956年から木製の折り畳み椅子を作り始めていました。

当初から「日本の生活に寄り添う、座り心地が良く、丈夫で、道具のように使い勝手の良い、そして安価な椅子を作りたい」という強い志と信念を持ち合わせて製作に取り組んでいたのです。

剣道具の製造を家業とする環境で育った影響は、新居猛さんの根底に根付いていて「道具」に対する特別な想いが折り畳み椅子の製作を後押しさせているようにも感じます。

そしてもう一人、NychairXの誕生と繁栄に大きく関わった人物がいるのです。

北欧家具に精通している島崎信さんが新居猛さんの折り畳み椅子に衝撃を受け、運命的な出会いによって巡り合わされた二人で命名されたのが「NychiarX」。

新居猛さんの名字である「ニイ」と、デンマーク語の「Ny ニュイ」の発音をかけて命名されたそうです。

そしてNychairXのXは、新居猛さんがデザインしたシンプルに美しく組み合わさったことで固定する椅子脚を表現しています。

この二人のお互いを引き寄せた出会いによって生まれ、完成し、世界的に愛される椅子にまでなったのです。

デザイナーの想いは「カレーライスのような椅子」

木工技術を学んだ後、デンマークの家具に多大な影響を受けている新居猛さんは、ご自身が思い描く日本の暮らしに合った椅子の製作に邁進しました。

デンマークの家具に影響を受けながらも、そのまま真似て作るだけの行程にしなかったのが、新居猛さんの揺るがない、日本に生きる日本人としての寄り添いの気持ちなのです。

新居猛さんが残している言葉に「誰からも愛される、とにかく安価な国民食のカレーライスのような椅子を作りたい」という言葉があります。

私はこの言葉に当時の日本の光景と日本人の心を思い浮かべられると思っているのです。

戦後の日本で、戦争に負けてしまい何もないところから、誰もが希望を胸に、より良い暮らしを追い求め、みんなのためになることに一生懸命だったのではないかと思いを馳せています。

貧乏という境遇に居ながらも、それをみんなで共有していた時代なので、他人と自分を比べることも少なく「みんなのために」の精神が込められている言葉なのだと信じているのです。

「カレーライスのような椅子」として皆さんにも浸透していくことを願っています。

NychairXの魅力に迫る!

日本人家具デザイナーの精神と想いがカタチになった椅子ということを少しお分かりいただけたでしょうか?

では、なぜNychairXが日本人だけではなく、世界から愛される椅子なのか、魅力に迫ってみます。

NychairXで使用されている部品はたったの6種類

  • 椅子脚になる軽量で錆びにくいアルミで作られたアルミパイプが2本
  • シート布を被せて使用する背もたれ部分のアルミパイプ2本
  • 肘掛け部分の高さも計算されてる、木製の肘掛けが2本
  • 安価だけれども座り心地と丈夫さを追及したシート布
  • 誰でも組み立てられるプラスドライバーと六角レンチを使用のネジ2種類

  組み立て式で軽量かつ誰にでも組み立てられる構造になっているのです。

究極のシンプル美

装飾が全く施されていない、究極にシンプルなのですが、装飾がない分一つ一つの部品が際立ち、数少ない部品が優美に存在するのが魅力なのです。

この究極的に削ぎ落とされた装飾のない美と機能性が評価され、アメリカのニューヨーク近代美術館に永久収蔵されているほどなのです。

日本においても、グッドデザイン賞やロングライフデザイン賞を何度も受賞しています。

 安価へのこだわり

とても軽量に作られていて、折りたためることにより使用場所を容易に変えられます。

安価に提供することにも強くこだわり、当時も輸送コストが高いこと、椅子をそのまま輸送すると容量ばかりが大きくて輸送コストが増減するばかり。

折りたたむことにより、NychairXを15cm〜22cmの厚みに抑えることにも成功しているのです。

日本人ならではの発想力

NychairXをデザインした新居猛さんは、徳島県の剣道具の製造業を営む環境の生まれなので「道具」に重きを置く感性は生まれながらのものかもしれません。

ご自身が、木製の家具作りの勉強していた頃にも、きっと道具に囲まれた生活をしていたことでしょう。

日本人を世界から見ると、とても器用で繊細な中にも、匠の技と利便性の追及に長けているところがあるようです。

道具一つも長きに渡って大事にして、ずっと使えていけるものに価値を置いている日本人の発想は、世界の他の国々からみて、当たり前ではないということですね。

新居猛さんのデザインは、シンプルな中に機能性とデザイン性、メンテナンスまでも考え尽くされた奥深さが、世界の人を驚かせ、通じたのでしょう。

NychairXのある暮らし

私がNychairXを知ったのは、日本製のインテリア家具を取り扱うあるショップでした。

そのショップには、日本製の木を贅沢に使ったどっしりした家具もありましたが、北欧テイストのおしゃれなインテリア家具も取り揃えていました。

アメリカ家具やイタリア家具に比べて、日本の中流家庭の家の中にも収まりそうな小ぶりでスタイリッシュな家具の中にNychairXが展示されていたのです。

その時が最初にNychairXを知ったきっかけでした。

その時見かけたNychairXはロッキングではないものだったと記憶しています。

それから数年後、とある移動式映画館が開催したイベント、星空上映会に参加しました。

ビルの屋上で開催されたその上映会では全ての観覧席にNychairXが用意されていて、映画鑑賞中にNychairXの座り心地を味わうこともできたのです。

夏の夜空の下、ビール片手にNychairXに腰をおろし、身体の背面全てが吸い込まれるようなフィット感に酔いしれた経験になりました。

その頃から「欲しいな!」と気持ちが芽生え、きっかけを探していたように思います。

そして結婚し、家族が増え、家族と時間を共有するようになった時に、再びインテリアショップで見かけたのです。

その時はロッキングタイプが展示してあり、まず飛び乗ったのは子供たちでした。

私が子供の頃にも、木製のロッキングチェアを所有する友人宅に遊びに行き、私も同じように飛び乗ってゆらゆら揺れて良い気分になったことがありました。

木製ロッキングチェアでは、高価だし、長年に渡り愛用するためのメンテナンスには職人の助けが必要になります。

NychairXなら、私にも組み立てができて、もし子供たちが汚したとしても「洗える」ことが最も大きな魅力でした。

その頃を機に購入し、我が家でも映画を観る時、のんびり読書がしたい時、ただただ日向ぼっこをしたい時などに、先着1名ですが愛用しています。

折りたたんで持ち出しが容易なので、バルコニーやリビングで気分に合わせて使用できるのも魅力です。

そして何より丈夫なので、繊細に取り扱うことなく大したメンテナンスもなく長きに渡って愛用できます。

NychairXのシリーズとパーツ

NychairXには3つのシリーズと3つのモデルがあります。

<シリーズ>

スタンダードなNychairX

NychairXでは、5色のシート布と2色の木製肘掛けから選べます。

2つ目は、NychairX Shikiri

Shikiriシリーズは、日本人の父とデンマーク人の母を持つテキスタイルアーティストによりデザインされたテキスタイルをシート布に使用したシリーズです。

Shikiriの由来は、日本の古くからある建築に用いられる「しきり」をモチーフにした、日本と北欧のテイストを感じさせる落ち着いたテキスタイルカラー。3つのパターン布と2色の木製肘掛けから選べます。

3つ目は、NychairX80

畳の上で生活した時代から、生活様式も様々になり、時代の生活に合わせてあとから作られたのがNychairX 80です。

座面を高くすることで、立ち上がり時の負担を軽減、背面のシートも折りたためるため、NychairXよりもさらにコンパクトに軽量に。輸送の問題も以前に増して改良され、折りたたむだけで小さくなるので、組み立てが不要なシリーズです。

NychairXと同じ5色のシート布と2色の木製肘掛けから選べます。

NychairX 価格 ¥57.200 3年間品質保証付
※NychairX80にはShikiriシリーズの販売はございません。

<モデル>

  • エックス
    アルミのパイプが美しくクロスして成り立つ固定型椅子脚。

NychairX 価格 ¥51.700(税込)3年間品質保証付
Shikiri 価格 ¥68.200(税込) 3年間品質保証付

  • ロッキング
    エックスモデルの椅子脚が、そのままロッキングスタイルに。

NychairX 価格 ¥55.000(税込)3年間品質保証付
Shikiri 価格 ¥71.500(税込) 3年間品質保証付

  • オットマン
    適な座り心地をさらにアシストしてくれる足置き。

NychairX 価格 ¥30.800 3年品質保証付
Shikiri 価格 ¥40.700 3年間品質保証付

NychairX公式オンラインショップ
https://fujiei-stores.jp/nychairx/nychair/

まとめ

日本が高度成長期にあたる昭和の時代に、国民の生活に寄り添いながらも質を上げ、優美なスタイルの提案をしていた家具デザイナーの新居猛さん。

NychairXを愛用する中で見えてくる、日本人のモノ作りに対する姿勢と心意気は本当に素晴らしいものなのだと教えてくれる。

NychairX誕生の頃から、さらなる時代の流れによって個別化、尊重型に移行している中でもNychairXは生活に寄り添い私たちの心を豊かにしてくれるのです。

ライター:Green Tee

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