皆さんは、北陸アルミニウム株式会社をご存じでしょうか。
この会社は、鋳物の街と呼ばれる富山県高岡市にある調理器具メーカーです。
昭和5年の創業以来ずっと、真摯に「日本の」調理器具を生産しています。
私はこの北陸アルミさんが作られた「あわせ窯」という万能鍋を愛用しています。
購入したのは、コロナ禍が始まった2020年。悩みぬいて購入しました。
愛用歴は3年と短いですが、2020年当時は、突然の“膨大なおうち時間”に不安を感じながらも、この「あわせ窯」を使ってちょっと丁寧に料理をすることで、心の安定を保つことができていました。
「あわせ窯」という鍋について、この機会に調べ直したところ、鍋はもちろん、製造された北陸アルミさんもとっても素敵な企業だと再認識しました。
一言でいうなら、グッとくる感じ。
それらも踏まえてこの記事では、「あわせ鍋」の魅力をお伝えしていきます。
北陸アルミニウム株式会社の心意気に惚れる
心をつかむ創業者の言葉
北陸アルミニウム株式会社のホームページを見ると、経営理念のページはいたってシンプル。しかし、そこに書かれている言葉とそこに込められた想いは熱く、胸に響きます。
まずは、そのままで美味しい直火炊きごはんのように、何も加えず、引用します。
創業者の言葉
一生を賭して悔いることのない会社
最良の商品を良心的に消費者へ提供する会社
消費者及び社会に対して最も信頼される会社
仕事を通して広く人間関係を深め
生きる喜びを得る会社をめざす。本当の一級品というのは
ながい伝統的技術をもつものが
心をこめてこしらえた「ホンマモン」のことである。社会のことでも、会社のことでも
志を持っている人は
人々が何も心配しないときに先んじて心配し
人々が楽しんでしまったあとで
楽しんでいるものだ。(荒井三郎の言葉より)
経営理念 | 北陸アルミニウム (hokua.com)より引用
一生を賭して悔いなしって、すごいですよね。
終わりまで読んでいくと、粋な方だなとも感じます。
熱量100%で仕事に取り組みながらも、俯瞰するための余力2割を残し、人と違う角度からモノを見て世界をおもしろがれる人。
また先駆者ゆえの孤独も引き受けた上で、天職を全うする人、そんなイメージが浮かびます。
こうした視点は、歴史ある職人の街だからこそ育まれたのかもしれません。
鋳物の街「高岡」について
高岡で鋳物産業が始まったのは、近世初頭の安土桃山時代からと言われています。
鍋や釜などの日用品や農具などの生産から始まり、次第に、釣鐘などの銅を使った鋳物制作へと広がっていきました。それから、美しい装飾を施した仏具など、日用品でありながら鑑賞する価値が高い製品を、高岡の職人たちは生み出していきました。
こうして磨き上げられた技術は海外でも評価され、輸出産業を通して街を発展させます。
北陸アルミニウム株式会社の創業者、荒井氏も高岡銅器の技術を基にしてアルミ鋳物による日用品の製造を始めました。
こうして見ると、400年の歴史が、確かに引き継がれているのだなと感じられます。
北陸アルミの強み
創業から一貫し、日用品の生産を続けている北陸アルミニウム株式会社は、国内でも指折りの企業です。始めから終わりまで自社生産を行っているので、各行程における品質チェックをすぐに行うことができ、安定的に信頼性の高い製品を作り続けることが可能です。
また、商品の改良にも力を入れ、基本的な魅力を守りながらも、それぞれの時代に合った形に進化し続けています。
北陸アルミの調理器具の魅力
はじまりは羽釜から
北陸アルミの製品第一号は羽釜です。
会社がスタートした昭和初期といえばまだ、いわゆる「おくどさん」で煮炊きをしていた頃ですよね。
日本で初めて「電気釜」が発売されたのは1924年。時は大正ですが、自動式電気釜が発売されるのはそれよりずっと後の戦後、1955年のことでした。
戦中、戦後は電気の使用も制限されていたことでしょう。すると、羽釜は現代に入っても割と長く、台所で日常使いされていたのではないかと思われます。
ちなみに私の母は、1954年に農家で生まれました。その母が二十歳のころまでは、家は茅葺屋根で、おくどさんも健在だったと聞いています。近所と比べて、我が家は家の建て替えが遅かったとは言え、地方では数十年前まで、昔ながらのやり方で煮炊きしていたようです。
参照炊飯器の歴史│炊飯器でおいしいごはん│家電製品・機器情報│家電機器│製品分野別情報│JEMA 一般社団法人日本電機工業会 (jema-net.or.jp)
進化を続ける万能鍋
「あわせ釜」の原点には、「吉岡鍋」という万能調理鍋の存在があります。
「吉岡鍋」は、水を使わず調理ができ、かまどで炊いたようにおいしいご飯が炊け、ガスの火でパンまで焼けるので、発売当時は大変な人気だったそうです。
その良さを残しつつ、現在の生活に合った改良が施されて「あわせ釜」は誕生しました。
本体、いわゆる鍋部分が深いのは、釜をイメージした設計だから。
私は、かまどでご飯を炊くことに昔から憧れがあるので、この鍋に、羽釜の機能が盛り込まれているのは、なんだか嬉しいなと感じます。
公式動画の世界観に憧れる!
北陸アルミ株式会社には、公式YouTubeチャンネルがあります。
ホームページにも掲載されている動画ですが、この世界観がたまりません。
これは、日本の台所という題名どおり、白い割烹着をつけた女性が、小気味のいい音を立てて包丁を使い、いろんな鍋を使いながら料理をする動画です。
女性の手業はさることながら、シンプルかつ丁寧な仕事ぶりが伝わる調理器具たちが、いい仕事をしている様子にも見入ってしまいます。
まさに古き良き時代の風景といった感じに、癒される方もおられるのではないでしょうか。
こういう動画を拝見すると、私もいい道具を長く使って、丁寧に料理を楽しみたいなと思うのです。
「あわせ釜」の愛らしい魅力
「あわせ釜」の特徴と多機能の紹介
「あわせ釜」には、大きく分けて二つの利点があります。
まずは、ウォーターシール効果と呼ばれる高い密閉性です。
蓋をした時、隙間なく鍋の上部に沿うように作られているので、中の温度を長く保つことができます。また早い時間で調理できるので、素材のうま味も逃がしません。
次の特徴は、熱伝導です。
「あわせ釜」には重量感があります。片手で持つとちょっと重く感じるほどです。
でもこれは、鋳物の良さでもあり、鍋や蓋に厚みがあることで、中の食材には上下左右からムラなく熱が伝わり、均一に仕上がります。
そしてこうした特徴を活かし、煮る、焼く、蒸す、ゆでる、揚げる、無水調理、炊く、オーブンがわり(天火)という8つもの役割を、1つの鍋で果たすことができます。
私もこの多機能に惹かれ、購入を決めました。
世界が一変したコロナ禍。
2020年は様々なことが重なり、”おうち時間”が増えました。
経済的な不安もあり、なるべく出費は抑えたいところでした。
それでも、食べること、家の中でささやかな暮らしを楽しむことは出来ると思ったのです。
そんな折、野菜の定期注文をしていた「コープ自然派」のカタログの中に、「あわせ釜」を発見。千円二千円で買える額ではないので悩みましたが、購入することにしました。
やって来た鍋はちょっと無骨。でも眠る猫のように優しい丸みがあり、割と重たいけど、可愛いヤツだなと思いました。
メリットとデメリット
メリットはこれまで述べた通り、オールマイティと言ってもいい程の機能性です。
私は数年前から、ミニマムな暮らしにも憧れ、極力、家具や家電、持ち物をシンプルにできないかと画策してきました。
そこで、1台で数役こなしてくれるこの鍋なら、収納棚もすっきりと収まるのです。
デメリットとしては、割と重たいことです。
でも先にも書いた通り、それは鋳物製品の良さでもあります。
また、この造りのお陰でおいしいものがいろいろと出来るなら、愛着を感じる重みとも言えます。
収納と手入れについて
収納する時は、蓋を逆さにして鍋にはめ込み、上に他の鍋を重ねることもできます。
しかし私は、元々持ち物が少ないので、普通に蓋をして納めています。
手入れも簡単です。
中はセラミックコーティングがされており、焼き物で少々焦げても、スポンジで磨けばきれいになります。日々使い続けているわりには、きれいな状態が持続しているので、これからも大事にしたいと思います。
料理不得意でも「あわせ釜」ならいろいろ出来ます!
私は一人暮らしが長く、店屋物ばかりは食べたくない性質なので、自炊はわりと続けています。得意と言えるほど上手くはありませんが、食べることが好きなので、美味しいものを作って食べたい、その一心であれこれ挑戦してみるのです。
「あわせ釜」は、そんな私の願いを叶えてくれた鍋です。
なかなかうまく出来た時は歓声を上げてしまうのですが、特に直火炊きご飯のおいしさは格別でした。そんな私の挑戦の軌跡を、これから紹介していきます。
「炊く」の機能を使って直火ご飯を
北陸アルミニウム株式会社のホームページに、「あわせ窯」を使ったレシピが掲載されています。それを見て、直火炊きごはんに挑戦。
とってもおいしく炊けて、思わずInstagramに投稿してしまいました。
野菜のうま味を感じる「無水調理」と「茹でる」
あらかじめ鍋を熱しておくことで、大さじ2、3杯の水だけで調理することも可能です。火の通りが早いので、さっと茹でたい青菜やそうめんにも適しています。
簡単「蒸し」野菜をメインの付け合わせに!
目皿という付属品を鍋の中に入れ、蒸し料理をするのもおすすめです。
水は目皿すれすれくらいまで入れます。
魚料理の付け合わせにして、楽しみました。
ムラなく「焼け」て「炒め」ものも出来る
均一に火が通るので、ギョーザも全体的に香ばしい焼き色がつきます。
この日は、蓋を鉄板皿として使用し、石焼ビビンバに。そのまま食卓へ運べるので便利ですよ。
「天火」や「オーブン」でパンも焼けちゃいます!
2020年に何より作ってみたかったのがパンです。
初めて焼けたときは、感動したことを覚えています。
写真1つ目は、鍋ごとオーブンでカンパーニュを焼いてみたもの。
2つ目は、ライ麦のちぎりパン。
少し形が悪くても、焼きたてパンはおいしいですね。
この他、ビックサイズのパンケーキも蓋を使って焼けます。
少量の「揚げ物」にも使えます
この日は、揚げ出し豆腐を。蓋に多めの油をひいて、揚げ焼きにしました。
揚げ出し豆腐にかける出汁は、鍋の方で作っておきます。
火の通りが早いので、煮込み料理も簡単です。
春野菜を使って、カレーとシチューを作りました。
蓋にご飯を入れて余ったルーをかけ、チーズをのせてオーブンで焼けば、ドリアもできます。
いろんな機能を試しながら料理を楽しむ
持ち物を増やしたくないし、出費も抑えたい。
でも料理を楽しんで、“おうち時間”を充実させたい。
そんな考えのもと、悩みながら「あわせ窯」を購入した2020年。
鍋1台で、どこまで出来るのかとあれこれ挑戦するのが楽しく、先行き不透明ななかでも、暮らしの彩りをみつけることが出来ました。
そして、無水調理ができたり、パンが焼けたりする鍋は他にもありますが、「コープ自然派」さんのカタログで見つけた時に私が「いいな」と思ったのは、この鍋が「日本製」だったからです。
どうせなら長く大切に使える物にお金を払いたいですし、今振り返っても、この鍋を買って良かったなと思います。
「あわせ釜」は、公式ホームページから購入することができますよ。
レシピも公開されているので、よかったらお試しください。
【GAS】マイスター あわせ釜 箱入 | 北陸アルミニウム (hokua.com)
ライター:コバヤシユウコ