津軽びいどろの魅力とは?青森の海が生み出した歴史

みなさんは「津軽びいどろ」という硝子工芸品をご存じでしょうか?

職人さんたちによって一つ一つ手作りされた、東北青森の歴史的伝統硝子工芸品です。

100を超える色彩が織りなす配色は津軽びいどろならではの魅力で、日常使いできる食器から、記念日に送りたい縁起物まで幅広いラインナップがあります。

今回は、そんな津軽びいどろの魅力をご紹介いたします。

目次

津軽びいどろとは

津軽びいどろとは、青森県青森市のガラス工場「北洋硝子」で生産されるガラス工芸品で、青森県の伝統硝子工芸品です。

「四季を感じるハンドメイドガラス」をブランドコンセプトとしており、テーブルウェアだけでなくライフスタイル全般に豊かな彩りと季節感を演出してくれます。

日本の四季、特に青森県は美しい四季の彩を感じさせてくれますよね。

そんな四季の魅力が、高い技術力と美しい色ガラスの調合によって表現されているんです。

最大の特徴は「色彩豊かな色ガラス」と「作り手の想いや情熱」で、ひとつひとつの商品にストーリーがあり、使用していくうちにどんどん愛着がわいていきます。

この「愛着をもって日々の生活で使用する」って、職人さんの願いでもあるんです。

伝統工芸品と聞くと、型に沿った使い方をしなければいけないと思ったことはありませんか?

しかし、器を自由に、モノ自体ではなくて、そこに付随する時間を楽しんで欲しいというのが職人さんの願いなんです。

例えば津軽びいどろの花器をパートナーにプレゼントするとしたら、「ずっと一緒に花を飾っていこう」という思いを込めて送って欲しいなど…。

とてもロマンチックですよね。

そんな願いが一つ一つに込められていたら、愛着がわかないわけありません。

津軽びいどろ誕生秘話

「津軽びいどろ」を生産する北洋硝子は、もともとは漁業用の浮玉(うきだま)製造を生業としていました。

1975年頃から浮玉がプラスチック製に切り替わったことから、浮玉に変わる商品を作り出そうと考え、長年の浮玉製造で培った「宙吹き」の技法を用いた大ぶりな花器などの生産に至ったんです。

また、青森という交通が不便な地理的条件もあり、色ガラス等の原料も自社で調合して補ってきました。

あるとき職人がふと思いついて、美しい七里長浜のひと握りの砂を原料として加えたところ、そのガラスは、美しい深みのある緑へと色を変えたそうです。

現在は100以上の色を織りなす津軽びいどろですが、この深みのある緑がはじまりの色とされています。

一時は絶版になったそうなのですが、なんと現在「復刻 七里長浜」という名前で復活しているんです。

レトロで上品な雰囲気が感じられる色合いは、他では見ることが出来ないのではないでしょうか。

職人さんの高い技術力と美しい色ガラスの開発への努力が「津軽びいどろ」を生み出し、現在では青森県伝統工芸品の指定を受けるに至りました。

津軽びいどろの作り方

津軽びいどろの作り方は、3つの工程に分かれています。

  • 材料調合・溶解
  • 成形
  • 徐冷

材料調合・溶解

最初に材料を調合します。

100以上の色がある津軽びいどろですが、これは職人さんがすべて独学で習得した技術によって生み出されたものなんです。

調合した後1500度の高温で材料を溶解していきます。

成形

津軽びいどろの成形方法は大きく4つに分けられます。

  • 宙吹き
  • ピンブロー
  • スピン成形
  • オーナメント

「宙吹き」は津軽びいどろの始まりとも言うべき伝統技法で、型を一切使わない方法です。

ドロドロに溶けたガラスを吹きさおの先端に巻き取り、息を吹くことで膨らませて形を整えます。

成形炉で再加熱しながら色ガラスや色ガラスのフリットを重ねて仕上げていきます。

自由自在な成形が可能ですが、息づかいを1つ間違えるだけですぐに変形してしまうので高い技術力が必要です。

「ピンブロー」はガラス玉にピンで穴を空け、水で濡らした新聞紙を差し入れて水蒸気で膨らませる技法で、緻密で繊細な調整が求められます。

コロンとしたデザインがとても可愛くて、一輪挿しやオイルランプなど生活の中に取り入れやすい小さな製品も作れるのが魅力です。

「スピン成形」は金型のなかに融けたガラスを落とし込み、金型自体を回すことで、遠心力をつかって成形する方法です。

手仕事ならではのぬくもりや風合いを活かしつつも、生産量を増やすことができる成形技術です。

金型の回し方・速度によって風合いが異なり、職人同士の連携も必要な技術で、何度も失敗・調整を繰り返しながら技術を確立させました。

「オーナメント」はコテやハサミ、金属製のハシなどを用いて造形物をつくる技術で、型を使わずに生き生きとしたカタチを創りだすことができます。

型を使わないため、同じものはひとつとしてなく、職人さんの想いが伝わってくるような作品が多いです。

徐冷

徐冷とは、ガラスにできた「歪(いびつ)」を取る工程のことです。

高温で成型したあと徐々に温度を下げて常温に戻しますが、その際、急激に冷やすとガラスの中に歪みが生じます。

歪みが生じるだけでなく割れてしまうこともあるので、一定の温度で専用の窯に入れてガラスを少しづつ冷ましていきます。

津軽びいどろの楽しみ方

津軽びいどろは日々の生活の中に取り入れやすい伝統工芸品です。

一輪挿しや箸置き、タンブラーや晩酌セットなどラインナップが多く、どれも魅力にあふれています。

これは、盃コレクションの「盃 わたゆき」という商品です。

今回は私が持っているおちょこの使用方法をご紹介します。

お酒の色を楽しむ

津軽びいどろには、同じ模様はひとつもありません。

それは手作りならではの味わいですよね。

それぞれ個性があってとても美しいのですが、お酒を入れたときにまた違う一面を見せてくれるんです。

お酒の色を映す模様はいつまでも見ていたいような感覚で、晩酌が特別な時間になります。

食卓を彩る食器として

本来の使い方であるおちょこ以外にも、我が家では小鉢としても使っています。

最初は少しもったいない使い方かな…とも思ったのですが、伝統工芸品は使ってこそ価値があると思い食卓に出してみました。

いつものなんてことはないおかずが上品に見えると、主人からも好評です。

故郷の四季を感じる器として

この「盃 わたゆき」は、青森県の雪景色をイメージして作られました。

白い斑点と金箔が厳しくも繊細な青森県の冬を感じさせてくれます。

私は青森県出身なのですが、遠い土地に嫁いだ今はなかなか帰ることができません。

少しだけ寂しいですが、この津軽びいどろを見るたびに故郷の冬を思い出させてもらえます。

津軽びいどろの誕生を目の前で

北洋硝子では事前予約をすると工場を見学することができます。

生産現場を実際に見ることで作り手の思いや商品の良さを感じてほしい。という願いから工場見学が可能になりました。

工場の中はかなりの暑さなので、服装には注意してくださいね。

旅東北:ガラス工場見学(北洋硝子 株式会社)

津軽びいどろの購入方法

北洋硝子株式会社 直営店

直営店HPリンク:https://tsugaruvidro.jp/

青森県青森市富田にあるガラス工場に直営ショップが隣接して設けられています。

店舗ではグラス、うつわ、箸置き、花瓶など北洋硝子が生産している様々な津軽びいどろのプロダクトを購入することができます。

東京ミッドタウン八重洲

東京ミッドタウン八重洲HPリンク:https://www.yaesu.tokyo-midtown.com/

2023年3月10 日に全国初出店となるオフィシャルショップがオープンしました。

今までは直に触って商品を選ぶことができるのは北洋硝子に隣接したショップのみだったので、東京で津軽びいどろの魅力を体験できるのはうれしいですよね。

公式オンラインショップ

公式オンラインショップリンク:https://tsugaruvidro-online.com/collections/irotemari

北洋硝子株式会社の公式ホームページより購入することができます。

まとめ

今回の記事では「津軽びいどろ」についてご紹介しました。

伝統工芸品というと、なんだか敷居が高く感じてしまいますよね。

しかし、日常生活の中で気軽に使うことでどんどん身近に感じることができます。

津軽びいどろはいろいろな種類の器や雑貨があるので、選ぶ楽しみが尽きることがありません。

実はもう狙いを定めているものがあるのですが、せっかくなら直営店に実際に選びにいきたいと思っています。

それまで故郷を思い出しながら「盃 わたゆき」で晩酌しようと思います。

今回の記事で、少しでも津軽びいどろに興味をもっていただけたらうれしいです。

ライター:kanoeri064

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