下田のまちの財産・外浦の塩の精神を受け継ぐ「シモダソルト」

シモダソルト

私たち人類が生きていくためには欠かせない塩。

宝石のような美しい色のピンクロックやクリスタルロック、ブルーロックなどの岩塩、ウユニ湖や死海など限られた場所でしか採れない希少な湖塩など、近年は魅力的な海外の塩を手軽に入手できるようになりました。
みなさんは、普段どんな塩をお使いでしょうか?

今年も暑い夏がやってきました!
体内のミネラルバランスを整える作用があると言われている塩。汗をかいたら水分補給と塩分補給はセットですね。
そんな暑い夏にぴったりな、見た目は冬に降る新雪のような「シモダソルト」をご紹介します。

目次

シモダソルトとは

シモダソルトは、「塩やの由利」の由利健二さんが静岡県下田市で作る、伊豆の豊かな自然の恵みを生かした手作りの塩です。
下田の海水をくみ上げ、日本の伝統的な製塩法の一つでもある「平釜製法」という製法で作られています。平釜製法とは、太陽の力で海水を凝縮し、そこから平釜で海水を煮詰め塩を結晶化させ製造していく製法です。特殊な平釜で液の表面で成長させると、トレミーという逆ピラミッド形や薄片状のフレークという形になり、これらの形が、溶けやすい、付着しやすい、粉と混ざりやすいなどの性質につながるそうです。煮詰め方によって、塩の個性が変わり、用途も広がります。
日本の塩作り|株式会社日本海水より引用

由利さんは埼玉県出身で、海のある街を目指して4年前に伊豆に移住。
移住して1年が過ぎたころ「外浦の塩」を知り、塩職人の村山英夫さんのもとを訪れ、これを機に塩づくりの道を歩まれています。

師匠の村山さんの作る外浦の塩は、下田外浦の海水100%、大きな鉄製の平釜で4、5日かけて煮詰めるという伝統的な製法で作られます。「外浦は山から豊富な養分が注ぎ込むからおいしい塩ができる」と村山さんが言うように、その複雑な味わいに魅了され、作り手に一目会いたいとわざわざ下田まで訪れるファンも多いそう。東京の有名寿司屋などでも使われている逸品です。また近年では、テレビ番組で女優さんが村山さんの外浦の塩を紹介して、さらに注目されるようになったようです。

村山さんは、きっと若い頃から塩づくり一筋の職人さんなんだろうなと思っていたのですが、なんと還暦を過ぎたころに塩づくりを始められたそう!
塩づくりの経験も知識も道具もない状態から、道具も手作りで、試行錯誤を重ね、外浦の塩を作り上げてこられたのです。
今の製法を確立するまで、なんと15年の歳月を費やしたとのこと。
そんな村山さんのもとを訪れた由利さんは、村山さんの塩づくりはもちろん、生き方や考え方に魅了された一人。
「この味を残したい、下田の味だから」と、村山さんと同じように、使う道具や作業小屋まで、すべて一人で作っているそうです。
日本全国にファンを持つ「外浦の塩」 | ニホン継業バンク (keigyo.jp)より引用

塩はいつから作られ、食べられていたの?

私たち人間が生きていくうえで欠かせない塩は、いつから作られ、食べられていたのでしょうか?

日本では、縄文時代の終わりから弥生時代にかけて塩が使われるようになったと言われています。
人々の生活が狩猟生活から農耕生活に変化していく中で、食事も動物の肉や内臓などから米などの穀物や野菜に変わっていきました。この頃から、必要な塩分は塩から摂るようになっていったようです。

最初の塩は海藻を燃やし灰になったものを塩味として使っていたという説があるようですが、これはかなり苦そうですね…。
その後、海水のついた海藻を天日に干し、その上から海水を注いで表面にできた塩を利用していたようです。
宮城県の御釜神社では、毎年7月に「藻塩焼神事(もしおやきしんじ)」が行われ、この製塩法を現在に伝えています。

周囲を海に囲まれた日本では塩作りは簡単なように思えますが、雨が多く湿気の多い気候の日本では、太陽の光と風で干して水分を飛ばす「天日塩」の製法は難しく、塩田で塩分濃度を高くした海水を釜で煮詰めて作る製法が主流となっていきました。(「揚浜式塩田」や「入浜式塩田」と呼ばれています。)
自然の力と人間の力のみで作り上げるこの製塩法は、昭和30年頃まで1,000年以上続いたそうです。

その後、電気の力を利用して海水の塩分を集める「イオン交換膜製塩法」が日本で確立されました。雨の多い日本の天候にも左右されず24時間稼働で安定的に塩を作ることができ、現在では塩製法の主流となっており日本と韓国の2カ国でこの製塩法が活用されているそうです。

一方、世界ではメソポタミア文明やエジプト文明といった古代文明発祥の頃には、すでに塩は使われていたようで、
死海などの塩湖があった地域では古代オリエント文明が栄え、ヨーロッパ文明の礎になったとも言われています。
古代ローマ時代、兵士の給料は塩(sal)だったそうで、英語のsalary(給与)はここから由来しています。
これは有名な話ですね!日本では年貢として塩を納めていたようです。
当時、塩は貴重なものだったことがよく分かりますね。

日本の塩づくりの歴史|公益財団法人塩事業センターより引用
日本の塩の歴史|東京ソルト株式会社より引用

日本人と塩の深い関係

私たち日本人にとって馴染み深い塩。
普段から口にしている伝統調味料の醤油や味噌、梅干しや漬物、各地の保存食にも塩が使われています。

一方で日本では昔から塩は食べるだけではなく、神が宿ると信じられてきました。
食べ物に神が宿ると同様に塩にも神が宿ると信仰され、塩の神様「塩土の神」は伊勢神宮や塩竃神社などに祭られています。

伊勢神宮で使用する「御塩(みしお)」は、毎年7月末から8月にかけての土用の頃、五十鈴川の河口の海水と淡水が交じり合う場所にある塩田「御塩浜」で、江戸時代始めに技術が確立されたとされる「入浜式製法」で作られています。
入浜式製法は、海水と淡水が混ざった汽水を塩田に引き、天日で乾かし、1週間ほどかけて高濃度の塩水(かん水)を作ります。このかん水を一昼夜かけて円形の釜で炊き上げ、「荒塩」が完成します。
この炊き上げ時に使用するのは昔ながらの薪だそう!夏の暑い時期に、本当に大変な作業です。

その後、10月と3月の年に2回、「御塩殿」でこの荒塩を三角錐の土器に詰め込み焼き固め、「固塩(かたしお)」が完成し、
「御塩」と名を変え、各宮で年間数千回と執り行われる神事に欠かせない神聖な御塩となります。
この、焼き固めの火を入れる神事「御塩殿祭」は、毎年10月5日、御塩神社にて千年以上前からの儀式に則り執り行われています。全国から塩業に携わる人々が集い、事業のさらなる発展と関係者の安全を祈念しているそうです。

御塩が作られるエリアは、少し行けば塩分濃度の高い海水が簡単に手に入ります。かん水を作るにも今よりも短時間でできるはずです。ではなぜ汽水を使うのかというと、塩の品質を保つためだそう。汽水を使った塩は、海水を使った塩よりもきめが細かい仕上がりになると言われているそうです。
神に捧げる神聖な御塩は、歴史を尊び、多くの人の手によって、一つ一つの工程を丁寧に大切に作られ、最後の仕上げは現在も厳かに執り行われているのですね。

また、神社だけでなく、日本の国技と言われ伝統文化でもある相撲でも、取り組みの前に力士が土俵に塩を撒いていますね!
これは大和から平安時代に相撲は神社のお祭りで行なわれていて、どちらの力士が勝つかによって豊穣や豊漁を占う神事だったことから、「占いの場=神聖な場所」を浄める清めの塩として土俵に塩をまく風習が生まれたそうです。

その他、地域や宗派にもよりますがお葬式後のお清めの塩や玄関や飲食店の入り口には盛り塩、自宅の浴槽に塩を入れる方もいらっしゃると思います。

このように、私たち日本人にとって塩は食用はもちろん、風習や言い伝えから様々な場所で今日も使われているのです。

御塩殿祭(みしおどのさい)|公益財団法人塩事業センターより引用
日本の塩の歴史|東京ソルト株式会社より引用

シモダソルトとの出会い

まさに下田の海のような澄み渡った鮮やかなブルーを基調に、可愛らしいイラストが描かれたパッケージ。
しっかりとした硬さのパッケージとは対照的に、中に見えるのはまるで新雪のような、ふわっふわで柔らかそうな塩。
「この塩の感じは今まで見たことがない!」と瞬時に何かを感じ取った私。それが私とシモダソルトとの出会いでした。

「おいしいお塩を買ってきたよ!」
姉が静岡県の下田に旅行に行った際に、お土産に買ってきてくれたのがこのシモダソルトでした。
私はこれまで、国内外含め数種類の塩を試してきたこともあり、受け取った時には「下田のお塩?おいしいの?有名なの?」という思いがありました。
しかしそれは、”だた私が知らないだけ”で、とても傲慢でした…。

まずシモダソルトの見た目で、これまでの塩とは違うものを瞬時に感じ取り、次にひとつまみ食べてみたところで、これまでにない甘さを感じました。
「これは食材と合わせたら、どんなことになってしまうのだろう!?!?!」と、ひとり、思いを巡らせます。

姉曰く、「とにかく何と合わせてもおいしいけど、塩むすびが一番かな?」ということで、すぐにご飯を炊き始めました。
塩加減が分からなかったので、気持ち少なめにシモダソルトをふり、炊き立てのあつあつご飯を「熱い!熱っい!」と言いながらに握ります。
握りたてほかほかの塩むすびを、家族そろって頬張り、「これはおいしい!」、「なんて優しい塩味と甘さなんだろう!」と満場一致の高評価!2個目の塩むすびには、少しだけシモダソルトを足しました。追加をしても塩分のしょっぱさや尖った辛塩辛さのようなものは全くなく、むしろ追加するほど甘みを感じ、お米の甘みと相まって、「これからおむすびは、この塩むすびだけでいい!」という思いが…。と同時に、隣から同じ声が聞こえてきました。

これは追加購入決定!
姉にどこで買えるのか聞くと、シモダソルトは一度にたくさん作ることができないとても貴重なお塩で、販売店も限られているようです。ネット通販もしていないようで、私がこれまでシモダソルトに出会えていなかった理由も納得です。
姉が買ってきてくれなければ、私はこの先もシモダソルトを知らずにいたと思うと、ただただ感謝するばかりです。

シモダソルトは由利さんの魅力そのもの

近年では世界各国の様々な塩が輸入され、日本各地でも様々な方法で塩が作られています。
キッチンに数種類の塩が並んでいることも珍しい事ではなくなりました。料理により塩の種類を使い分けている方も多いのではないでしょうか?

海に囲まれた日本での塩の自給率はわずか11%~15%と言われています。そして、その多くは24時間、安定的で大量に生産ができる製法で作られています。
そのような中で、昔ながらの製法で手間を惜しまず作られているシモダソルトの存在は貴重で、私にはとても魅力的に映ります。

これまでの日本の製塩法の歴史の中でも課題であった、海から海水を運ぶ重労働や雨が降れば水分が飛ばない事、釜で海水を煮詰めるための火力(薪など)の準備。素人の私から見れば、とても大変そうでデメリットとも思えることを、由利さんはこれが当たり前で最良の方法とし、そしてすべてイチから1人で作り上げているのです。便利な機械等が溢れているこの時代に、少しくらいラクをしてもいいと思うところを、たった1人で、手作りの器具等を使って作っているのです。
語彙力がなさすぎるのですが、この姿には、”カッコイイ”の言葉しか見つかりません。由利さんが師匠の村山さんに惹かれたように、私も由利さんの考え方、生き方、シモダソルトへの向き合い方に、一気に惹かれてしまいました。

そんな由利さんは、外浦の塩を受け継ぐ前に、村山さんの人間性、外浦の塩への思いや信念を受け継がれたのだと思います。それを守っていくことが、外浦の塩を受け継ぐことに繋がるのだと、そんなふうに感じるのです。
村山さんの作る外浦の塩は後継者がいないことを知っていながら、自分からは決して「継がせてください」と言う言葉を発しなかったという由利さん。村山さんの元で塩作りを習い始めて数ヶ月経った頃、村山さんから信頼してもらい、認めてもらえたその時に初めて「お願いします。継がせてください。」と伝えたそう。

そんなまっすぐで、筋の通った由利さんが作るシモダソルトは、まるで新雪のように真っ白でふわふわな見た目。
塩を触ってみても見た目通りふわっふわで、塩の粒はとても細かいのですがきれいに揃っていて、一粒一粒がひかり輝いているのです!なんだか、由利さんのイメージそのものなのです。どうやったらこんなにきれいな塩を作ることができるのだろう?と想像してみるのですが、由利さんがあたり一面に湯気の立つ純チタン製の平釜の前で、真剣に塩と向き合っている姿しか思い浮かびません。
そして、味はとてもまろやか。塩辛いとかしょっぱいとか、尖ったきつい塩味は全く感じられません。「丸い、甘い塩」という表現がぴったりです。私が今まで食べてきた塩の中で、一番まろやかで丸みのある甘味を感じる塩です。

以前、由利さんと同じように平釜製法で塩を作る方の番組を見たことを思い出しました。塩を作る方法やノウハウを教えてもらっても、その人と同じ塩を作ることは難しいという内容でした。海水を煮詰める火加減で塩の結晶の大きさが変わり、この結晶の大きさで味も変わるため、同じように作っても全く同じものはできないそう。
これは裏を返せば、作る人の個性が際立つということですよね!私は村山さんの外浦の塩を食べたことがないのですが、村山さん外浦の塩の味を受け継ぎつつ、由利さんのオリジナリティーがシモダソルトには入っているのかな?と想像しながら楽しんでいます。

シモダソルトの楽しみ方

シモダソルトに出会ってから、調味料である塩をメインとしたメニューを考えることが多くなりました。
塩のおいしさと食材本来の味をそのまま感じたいので、余計なものを足さない、素材そのままを焼くだけ、ゆでるだけ、揚げるだけ、蒸すだけといった簡単でシンプルなメニューです。
塩むすびの他にも、こんな使い方がおすすめです。

1.グリル野菜に

旬の野菜をグリルすることで野菜本来の甘みが増し、シモダソルトをパラパラとかけると、野菜のおいしさがさらに際立ちます。
春は、春キャベツ、スナップエンドウ、アスパラガス、新じゃがいも、新玉ねぎ、たけのこ
夏は、とうもろこし、トマト、オクラ、なす、ズッキーニ、枝豆、パプリカ、ゴーヤ
秋は、さつまいも、かぼちゃ、ぎんなん、しいたけ
冬は、大根、にんじん、ブロッコリー、れんこん、山芋、かぶ、ねぎ など
ぜひ旬ならではのお好みの野菜でお楽しみください。そして最初の一口はシモダソルトのみで召し上がってみてください。

2.すいかに

糖度が高いすいかをそのまま食べるのも甘くておいしいのですが、そこにシモダソルトを一振りすると、塩ではなく砂糖を振ったかのような甘さに大変身!
私が間違えて砂糖を出したと思った家族から「これ、お塩だよね?」と確認されたくらいです。
夏の水分補給にもおすすめです。

3.天ぷらに

野菜や魚介類の天ぷらにシモダソルトを添えると、天つゆで食べるよりも素材本来の甘みや旨味、苦みをより感じることができます。
特におすすめは、魚や海老の天ぷらです!もともと同じ海にいたからでしょうか?魚介と塩の相性は抜群です!
魚介の旨味や甘味が、シモダソルトでさらにパワーアップして口に広がり、鼻に抜けていきます。
白いご飯のお供だけでなく、日本酒やビール、白ワインなどと一緒に、ぜひ揚げたてに、シモダソルトをパラパラとかけて、アツアツをお楽しみください。

4.トマトやきゅうりの丸かじりに

新鮮なトマトやきゅうりなどの生野菜にシモダソルトを一振りすれば、さらにみずみずしく、野菜の甘味や本来の味を感じることができます。
きれいにカットしたものよりも、野菜を手に持って、口を近づけて、ガブリ!と丸かじりがおすすめです!
暑い夏のおやつの、アイスクリームやかき氷の代わりにいかがですか?

5.お肉や魚介類に

牛肉、豚肉、鶏肉などのお肉や、白身魚や海老や帆立などを焼いたものにパラパラとシモダソルトをかけるだけ!
丁寧に作られたソースももちろんおいしいのですが、このひとつまみのシモダソルトの塩味とまろやかな甘みが、素材本来のおいしさをさらに引き出してくれます。
シンプルな調理法が、素材そのものの味を楽しめる一番贅沢な一皿になるんだなということを実感しています。

6.デザートに

バニラアイスにシモダソルトをパラパラとかけると甘みとともに清涼感が増すように感じます。
甘いものには塩を!これは「対比効果」と言うそうですが、異なる味を加える事で一方の味を強める効果があるそうです。
前述の「すいかに塩」も同じですね!おしるこやぜんざいにも、ひとつまみのシモダソルト、おすすめです!

シモダソルトはどこで買える?

シモダソルトは、静岡県下田市の道の駅で購入することができます。
小粒・中粒・大粒の3種類があるようです。
道の駅「開国下田みなと」

残念ながら、ネット通販はされていないようなので、下田に遊びに行かれる際には、ぜひ道の駅「開国下田みなと」まで
足を運んでみてはいかがでしょうか?
一度にたくさん作ることができないため、在庫状況は道の駅で確認されることをおすすめします。

日本の伝統的製法の塩を大切にいただく

今回は「シモダソルト」をご紹介しました。
みなさん、いかがでしたでしょうか?

日本の伝統的な製法で作られる塩は、日本各地に存在し、作り手さんの個性が光っています。
その土地の自然の恵みと、作り手さんが愛情を込め、手間をかけて生み出されるその味は、誰にも真似できない唯一無二の特別なものですよね。そんな背景を思い浮かべながら、一粒ひと粒、大切に、ありがたくいただく。
味わい方もこれまでとは変わってきますね。

その特別な味をしっかりと味わった私たち消費者が、作り手さんに感謝の気持ちと応援を送ることで、村山さんから由利さんへ、そして次の方へ…というように、バトンがしっかりと渡されていくことを切に願っています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ライター:tmintchoco


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