日本の食文化・和食に欠かせない!受け継いでいきたい伝統的調味料「三河みりん」

三河みりん

海外では、”mirin “や”sweet sake”、”sweet cooking sake”と呼ばれ販売されているみりん。

みなさんのご家庭でも、みりん、常備されていますか?

「和食」に欠かせない調味料のみりんですが、知っていそうで、実は知らないことありませんか?

日本人なら知っておきたい、一度試してみてほしい、そんな伝統的調味料の 「三河みりん」をご紹介します。

目次

みりんは飲み物だった!?みりんの歴史

現在は調味料として使われているみりんですが、昔は「甘いお酒」として人々に愛されてきたということをご存知でしょうか?

みりんの起源は、中国から甘いお酒として伝わったという説と、日本に昔からある甘いお酒(練酒や白酒)の腐敗防止でアルコールを入れたものがみりんになったという説があります。

日本では戦国時代から甘いお酒として飲まれ始め、江戸時代になると、お酒が苦手な人や女性が楽しんで飲むことができる「高級な甘いお酒」として広まりました。お酒が飲めない方をみりんでおもてなしする習慣もあり、夏場にはみりんに焼酎を加えて冷やしたものが、滋養飲料として飲まれるようになったそうです!

当時は、麹を作る技術が発達していなかったため、今のような濃厚で甘みのあるものではなかったようですが、このように多くの人々に親しまれました。  

その後、鰻のたれやそばつゆなど、醤油や鰹節、砂糖などとかけ合わせて相乗効果を生む調味料として使われるようになり、現在も続く「和食」の礎を築いていきました。

日本人の繊細な味覚があったからこそ、みりんが調味料としても人々に広まり、受け入れられるようになったのですね。

現在のような、旨みと甘みが濃厚なみりんが作られるようになったのは昭和に入ってからだそうです。

以前、「一口飲んでみて、おいしいと思うみりんを使うのがいいよ!」という話しを聞いたことがありました。その当時は「えー?調味料のみりんを飲むの?」と思っていたのですが、もともとは甘いお酒として飲まれていたことや原材料を見れば、今さらながらですが深く納得です。

バーなどでは、三河みりんをお酒として提供するお店もあるそうで、これまでのみりんのイメージが一気に変わりました。

プロも絶賛の品質!三河みりんとは?

みりんは、千葉県や兵庫県など全国各地で生産され、その中でも愛知県は全国で3番目の生産量を誇るみりんの生産地です。そこで作られている「三河みりん」は、2016年5月の「伊勢志摩サミット」の料理にも使われたプロも認める品質です。

「三河みりん」と呼ばれる条件は下記の2つです。

  • 三河地方で作られているもの
  • 本みりんであること

三河地方とは愛知県南東部地域のことです。その中でも、古くからみりんや清酒、味噌、醤油の醸造の街として知られる碧南市を中心に、三河みりんが作られています。

みりんはもともと、清酒の蔵元が兼業で作ることが多かったようですが、温暖な気候と醸造に適した水が豊富な碧南市では、200年以上も前からみりん専業の蔵元があったと言われています。

そして本みりんとは、もち米、米麹、本格焼酎のみを原料に伝統的な製法で作られたみりんのことです。

みりんの種類には、伝統的製法の本みりんの他に、標準的製法の本みりん、発酵調味料(みりんタイプ)、みりん風調味料があります。これらは、原材料に食塩や糖類、香料、うま味調味料が入っていたり、製法やアルコール分が違います。

本みりんはアルコール14%を含んでいるため、酒類に属します。一方、発酵調味料(みりんタイプ)もアルコール14%を含んでいますが、本みりんに塩を加え、お酒として飲めなくしているため酒類ではないそうです。

これは知りませんでした。お酒として飲めるか飲めないかの基準なのですね!

では、この伝統的な製法とはどんな製法でしょう?

伝統的製法

日本の伝統的な製法です。 上質なもち米を原料に使用し和釜で蒸煮。 仕込み後のみりんもろみを長期糖化熟成します。 みりん本来の製法で、乙類焼酎(米焼酎)を用います。 醸造・熟成期間は2年がかりです。

工業(標準)的製法

戦後から行われるようになった工業的な製法です。 加圧蒸煮や高温液化などの処理を施して、短期間ででんぷんやたんぱくの利用率を増します。 乙類焼酎ではなく、ホワイトリカーなどの甲類焼酎を用います。 醸造・熟成期間は40日から60日ほどです。

みりんへのこだわり(原料と製法))より引用

製法の詳細はこちらをご覧ください。

みりんのできるまで(製造工程)

艶のある琥珀色のみりんは、長い時間をかけて醸造、熟成された本物の証なのですね!

そしてこの製造工程で出てくる、みりん粕(こぼれ梅)は奈良漬や守口漬に使われ、酒粕よりも甘味があり、米や米麹の栄養が豊富な「幻の発酵食品」として注目されています。

奈良漬はもちろん、粕汁やクリームシチュー、鶏肉をみりん粕に漬けて焼いたものなど、さまざまなみりん粕レシピがあります。

私はこのみりん粕で魚介類を漬けた「鈴波」のお魚が大好きです。魚介本来の味を引き立てる上品な甘さと、ほんのり香るお酒の香りが食欲をそそります。そして、しっとりふんわり柔らかい食感は何度食べても、またすぐに食べたいと思う逸品です。御膳にはもちろん守口漬も添えられていますよ。

鈴波

みりん粕を販売している蔵元もありますので、のちほど紹介します三河みりんの蔵元の公式サイトをご参考になさってください。

本みりんの調理効果と使い方のコツとは?

みなさんは、調理中どんなタイミングでみりんを加えていますか?

本みりんの成分には、糖類、アミノ酸、有機酸、香気成分、アルコールが含まれ、これらの成分が調理時にすばらしい効果を発揮してくれるのでご紹介します。

1.照りとツヤを出し、奥深い旨みとまろやかな甘みを出してくれる

本みりんの成分に含まれる糖類(ブドウ糖やオリゴ糖など)を加熱することで保水効果が高まり、照りやツヤが出ます。またアミノ酸が奥深い旨みを、有機酸がコクを、糖類が複雑で上品な甘みを出してくれます。 

煮物の照りとツヤはみりんのおかげですね。

2.食材の臭みを消し、味を染み込ませやすくしてくれる

本みりんの中のアルコールが加熱され、蒸発する際に食材の臭みを取り除いてくれます。またみりんの香気成分が食材に上品な香りをつけてくれるそうです。さらにアルコールは分子が小さいので、他の調味料と一緒に食材の中まで旨み成分を染み込ませる効果があります。

みりんは煮魚や肉料理に最適の調味料ですね。

3.煮くずれを防ぎ、食材の旨みを閉じ込めてくれる

本みりんの成分のアルコールには、野菜などに含まれるペクチンが長時間の加熱により溶け出すのを防いでくれます。さらに糖類とタッグを組み、食材の旨みを閉じ込めてくれる効果があります。

肉じゃがにみりんは必須ということですね!

こんなにすばらしい効果がある本みりんですが、その効果を最大限に活かすためには使い方にもコツがあります。

1.野菜や肉の煮物

煮くずれしやすい食材には、早めに砂糖やみりんを入れることで煮くずれを防ぎ、旨み成分の働きで中までしっかり味が染み込みます。発酵調味料である醤油や味噌は、仕上げの段階で入れると風味良く出来上がります。

2.煮魚

みりんを少し多めに入れた煮汁を沸騰させた中に魚を入れて短時間で仕上げます。

照りやツヤを出したい場合は、最後の仕上げにみりんを加え、強火でアルコールを飛ばします。

3.焼き物

焼き物に照りやツヤを出したい場合は、余熱で素材に火が通るタイミングでみりんを塗り、さっと焼いて仕上げます。

その他、ドレッシングや寿司酢の隠し味にいれると、お酢の角をとってくれてまろやかな味わいにしてくれるそうです。

これまでなんとなく仕上げに使っていたみりんですが、調理効果を理解すると、しっかりと意味のある使い方ができ、仕上がりにも大きな差が出ますね。

蔵元が伝統の製法で、丁寧に年単位で愛情をこめて作ってくれた貴重な本みりん、改めて大切に丁寧に使い、おいしくいただきたいなと思いました。

私と三河みりんとの出会い

「ねえねぇ、三河みりんって知ってる?」

料理好きの友人宅に遊びに行った時、突然こんな質問が飛んできました。おいしいものは好きだけど、正直、調味料はそこまでこだわりがなかった私の答えは、

「もちろん知らない!なになに?おいしいの?」

友人は愛知県に住む知り合いからの贈り物で三河みりんに出会ったらしく、初めて出会ったそのおいしさを誰かに伝えたくてしかたないといった感じでした。いつもよりテンション高めで話が続きます。

   左が三河みりん、右が某社の本みりん

「特に煮物の味が、今までのみりんと全然違うの!」と、キッチンから瓶に入った三河みりんを持ってきて見せてくれました。

私がいつも使っているみりんよりも色が濃く、その色さえもおいしそうと感じてしまう第一印象。さらに瓶に入っているというだけで、またまたおいしそうと感じてしまうのは私だけでしょうか?

今からちょうど5年前の出会いでした。

「今使っているみりんが終わってから試してみるね!」と、メーカーとパッケージを忘れないように写真を撮らせてもらいました。

それから半年ほど過ぎた頃、料理好きで調味料に詳しい別の友人から、まったく同じ質問をされたのです。

「これはもう買うしかないでしょー!」と、その日のうちに購入したのでした。

購入後、すぐに上記の写真のみりんと飲み比べをしました。

どちらもおいしいのですが、三河みりんは香りとコク、しつこくない甘みが格段に違ったことを今でもはっきりと覚えています。

愛用歴4年目のオススメ!三河みりんの使い方

愛用歴はまだ4年ほどの初心者ですが、私が三河みりんのおいしさに感動した使い方をご紹介します。

1.三河みりんでそうめんつゆ

私が一番おすすめしたい三河みりんの使い方は、そうめんつゆです!そうめんつゆは材料がシンプルなので、それぞれの材料の味がそのまま出るな〜と感じます。同じレシピでみりんだけ三河みりんに変えてみたら、家族全員の箸が止まらず、気づけばそうめんを追加で茹でていました!

2.厚焼きたまごに三河みりん

材料は、たまごと三河みりんとほんの少しのお醤油のみです。たまごを焼いているとキッチンがふんわり優しい甘い香りで満たされ、おいしさが伝わってきます。別の部屋にいた家族もその香りにつられて様子を見に来るくらい!ほんのり甘く、仕上がりもふっくらです。

3.三河みりんで生姜焼き

三河みりんのコクとまろやかな甘さ、香ばしい醤油と生姜の爽やかな風味が白いご飯によく合います。こちらもみりんだけでこんなにも違うのか!という一品。照りもよく出ています。

4.ご飯を炊く時に三河みりん

お米2合に小さじ1杯の三河みりんを入れてご飯を炊くと、ツヤがあり、ふっくらモチモチのご飯が炊けます。みりんの甘みも感じます。冷めてもモチモチでおいしいです。

5.コーヒーやアイスクリームにちょっと三河みりん

ブラックコーヒーにほんの少し三河みりんを入れると、ほのかに甘く、ブランデーのような香りに包まれます。ティースプーン1杯で芳醇なコーヒーや大人のアイスクリームに早変わりです!

三河みりんの蔵元のご紹介

現在、伝統的製法で三河みりんを作っている蔵元は6つあり、それぞれの個性が光っています。

1.角谷文治郎商店

角谷文治郎商店

調味料好きの定番のみりんと言えば、このみりんというくらい有名です。友人たちに薦められたみりんもこちらのみりんです。どの食材とも相性が良く、使い続けたいと思う1本です。

期間限定でみりん粕の販売もしています。

2.九重味淋株式会社

九重味醂株式会社

 1772年創業、江戸時代から続く老舗の蔵元です。メディアにも多数出演。250年受け継がれてきた伝統の製法で、主張しすぎないさっぱりとした甘みが好評です。

3.杉浦味淋株式会社

杉浦味醂株式会社

愛櫻三年熟成みりんは、公式オンラインショップで完売するほどの人気商品です。原材料はすべて三河産。みりんとは思えない濃い色で、熟成された旨みとまろやかな甘みが人気です。

その他の蔵元はこちらからご覧ください。

蔵の見学も開催されているようです。蔵元めぐりで、それぞれの歴史やみりん作りに対する考えや思いなどを聞いたうえでいただくみりんは、また違った味わいになりそうですね。

愛知県酒造組合 みりんの蔵元紹介

まとめ

今回は「三河みりん」をご紹介しました。

みなさん、いかがでしたでしょうか?

友人に教えてもらわなければ、きっと自分で調べることもなかった三河みりん。

素材ももちろん大切ですが、素材の良さをさらに引き出すのは、本物の調味料とその使い方次第。

私にとってこの出会いが、少しずつ調味料に興味を持つきっかけとなりました。

砂糖、塩、酢、醤油、味噌、日本酒、鰹節や昆布、そしてみりん。

どれも、私たち日本人が慣れ親しんできた「和食」の基本となる調味料です。

そしてこの「和食」はユネスコの無形文化遺産に登録されています。

このような伝統的な日本の調味料を深く理解し、使い、伝えていくことも、私たち日本人が「和食」という伝統的な食文化を守り、継承していくことにつながるのではないかと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ライター:tmintchoco

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