山中塗の工芸技術×燕三条の工業技術 技術と伝統の結晶「漆磨(シーマ)」

日本の伝統工芸品である漆器。 

器の表面に漆を塗り、食器としての耐久性やデザイン性を向上させる日本の伝統的な手法である漆塗り(うるしぬり)は、艶やかで温もりのある独特の風合いが古今東西多くの人に愛されてきました。

一方、古くは武士の刀や農民が使う農耕具などにルーツがある包丁や爪切り、鉈などの刃物の製造や金属加工技術もまた、日本独自の伝統的な工芸です。

さて、今回ご紹介するのは、そんな漆塗り技術と金属加工技術が、長い時を経てクロスオーバーし融合した現代的工芸品「漆磨(シーマ)」です。

※写真は漆磨のお猪口「赤富士に鶴」と「 雪月花」のペアセット

目次

漆磨とは

漆磨とは、日本の伝統工芸である漆塗り「山中漆器」の技術と、「燕三条」の金属加工技術を融合させた、まったく新しい工芸品です。

まずはそれぞれの特徴と魅力をご紹介します。

山中漆器とは

日本の伝統的な漆器の産地として石川県や福島県、福井県などが有名ですが、漆磨で採用しているのは400年以上もの歴史を持つ石川県の「山中漆器」です。

漆器の名産地石川県の中でも、とりわけ漆器三大産地として知られている「塗りの輪島」と「蒔絵の金沢」、そして「木地の山中」。

木地の繊細で美しいつくりが特徴的な山中漆器ですが、そんな山中漆器が金属と融合。現代技術をもって到達した両者の化学反応は、日本の伝統工芸に新たな息吹を吹き込みました。山中漆器の艶やかで気品のある風合いがいっそう際立ち、食事や酒の席を優雅に彩ってくれます。

漆器の歴史についてはこちら(きりっとしながらも丸みを持つ漆器 象彦)の記事で詳しくご紹介しているので、併せてご覧ください。

燕三条とは

漆磨の食器は、素地に金属を採用しているのが特徴です。

刀鍛冶や和釘づくりなど日本の金属加工の歴史は長いですが、中でも「大阪府の堺市」「岐阜県の関市」「新潟県の三条市」は日本三大刃物生産地として知られており、その技術の高さに国内だけでなく海外企業も注目。

燕三条とは、新潟県のほぼ中心に位置する刃物の名産地「燕市」と「三条市」の一帯を指しています。日本三大刃物生産地の一つであり、あらゆる金属加工の集積地として知られています。

燕三条は江戸時代の和釘づくりにルーツがあり、現代では特にステンレス加工における高い技術が国際的に評価されています。

金物文化の長い歴史とともに培われてきた、日本が誇るべき伝統技術の一つといえるでしょう。

漆磨とは

漆磨は、長い歴史と伝統を持つ山中漆器と、同じく長い歴史と伝統を持つ燕三条の金属加工技術を融合させ、まったく新しい工芸品を誕生させた、株式会社ウチキのプロダクトおよびブランドです。

そもそも本来、ステンレスに漆を塗るのは技術的に難しいといわれていました。しかしそんな常識を覆し、漆塗りと金属の融合を実現させたのが漆磨です。

漆塗りの艶やかさと温もり、高い研磨技術で加工された金属の品格と上品さ。一見すると相容れないような両者がタッグを組むことで、華やかだけど派手ではない、気品があるけど地味ではない、絶妙な風合いを持つ新たな工芸品が誕生。

不可能を可能にした高い技術だけでなく、漆磨に携わるあらゆる方々のこだわりや熱意を感じずにはいられません。

漆磨の魅力

漆磨の魅力を一言で言い表すなら「高い芸術性と機能性」です。

漆塗り、金属加工、そして和を思わせる洗練された絵付け。これらすべては長い時間と膨大な手間をかけて培われてきた伝統技術の集大成です。決して一朝一夕では実現されない、膨大な年月と数多くの職人達の努力や創意の結晶といえるでしょう。そんな歴史を五感で体感させてくれるのが、漆磨の魅力です。

漆磨は洗練されたデザインが印象的ですが、実は高い耐久性を併せ持ってもいます。

そもそも素地が金属ですから、木地のように割れるようなことがありませんし、傷もつきにくいという強みがあります。加えて漆にもまた高い耐久性と柔軟性があり、耐水性や防腐性にも優れた素材として古くから利用されてきました。

そんな両者を主な素材として採用しているので、漆磨の製品は機能性が高く耐久性に優れており、衝撃や腐敗などに強いのが特徴です。

漆磨の生みの親 株式会社ウチキのこだわり

株式会社ウチキは、山中漆器の産地である石川県加賀市を拠点とする漆器メーカーです。

明治21年(1888年)の創業以来、木製漆器やPC漆器、金属漆器などさまざまな漆器を扱ってきました。

株式会社ウチキの一番の特徴は、400年以上もの歴史を誇る伝統工芸である山中漆器を、メーカーとして専門的に扱っているところ。

日本が誇る伝統工芸・伝統技術を継承し守りつつ、さらなる進化を目指して研鑽を重ねています。

さて、漆磨の独特な風合いや魅力は、製品としての品質の高さだけでなく漆磨を手掛ける企業の理念や方針からも垣間見ることができます。 

ここでは、漆磨の製造者である株式会社ウチキのこだわりについて簡単にご紹介します。

400年を誇る伝統の継承

山中漆器が誕生したのは、今から400年以上も昔に遡る安土桃山時代といわれています。

石川県加賀市は山中温泉地区で生まれた山中漆器は、特に生地の自然な木目を生かした美しさと、優美な蒔絵の美しさが特徴です。

いずれも職人達の高度で繊細な技術によって実現されるもので、製造過程のほとんどが手仕事で行われており、中には漆器の完成に一年以上の時間を要するものも。

株式会社ウチキは、人間の感性や手仕事でしか表現できないそんな技術を継承し、現在から未来へと紡いでいます。

時代に合わせた柔軟なものづくり

伝統的な工芸品を現代に継承するだけでなく、伝統工芸や伝統技術を生かしながら時代のニーズに合わせ、常に新商品の開発に尽力するスタイルも、株式会社ウチキのこだわりといえるでしょう。

環境や人体に配慮した、安全で持続性の高い漆器用成型材料や樹脂など「人と地球環境に優しい素材」の開発にも力を入れており、木質バイオマス樹脂を利用した地球環境に優しい山中漆器を製造しています。

デザイン性と実用性の両立

伝統工芸品は高い美術性とともに、長い年月の中で培われた実用性や高い機能性を有するものです。漆磨を含むウチキ社製品の特徴は、現代的なデザインを取り入れつつ美術品としての価値に重きを置き、それでいて機能性や実用性を損なうことなく、むしろさらなる進化を試みる姿勢です。

伝統にあぐらをかくことなく、現代の多用なニーズに応えるために試行錯誤する姿勢は、まさに伝統工芸のガーディアンでありパイオニアでもある”職人”の姿そのものなのかもしれません。

参考サイト:株式会社ウチキ
https://uchiki-co.com/index.html

漆磨は日頃の感謝を伝えるギフトに最適

気品と高級感を兼ね揃えた漆磨は、大切な人への贈り物にもぴったりです。

写真のようなお猪口のペアセットなどは、ご両親に感謝の気持ちを伝えたり、ご友人へのご結婚祝いや新築祝いなどに最適。

また、美しい姿のまま長持ちする漆磨の耐久性や実用性は、おじいちゃんやおばあちゃんの長寿を願う縁起のいいギフトにもうってつけです。退院祝いや還暦祝いなどにもおすすめですよ。

参考サイト:漆磨カップオンラインショップ
https://shi-moa.shop-pro.jp

漆磨の使い方とメンテナンス方法

漆特有のにおいが気になる場合は、水で薄めた食酢を柔らかい布にしみ込ませ、食器を優しく拭いてからぬるま湯で洗い落としてください。

また、漆磨は料理の保存には向いていないため、料理を乗せたまま長時間置かないようにしましょう。使用後は中性洗剤を用いてスポンジなどで洗います。洗い終わったらぬるま湯ですすいでください。

なお、金たわしやクレンザーなどの研磨剤は損傷の原因になるので使用しないでください。

使用上の注意点

・電子レンジでは使用できません。

・食洗器は使用しないでください。

・直射日光が当たらない風通しのいい場所に収納してください。また、漆器は乾燥に弱いため、長期間使わない場合は数ヶ月に一度のペースでぬるま湯ですすいでうるおいを与えてください。

・素地が金属製ですので、錆び予防のため洗浄後は水気をしっかりと拭き取り乾かしてください。

漆磨で日本の伝統と文化に思いを馳せる

伝統工芸品であり、現代美術品のような面持ちも持つ漆磨。

漆磨をテーブルに添えるだけで、食卓が一気に華やかさを増すので不思議です。心なしか食事やお酒がいつも以上においしく感じられることも。

また、漆磨は特別な日の食卓や一服にもおすすめです。一つひとつ丁寧に作られた漆磨の美しさが、きっとあなたの心を癒やしてくれるでしょう。

“良いもの”が与えてくれる”良い気分”を存分に満喫したら、今度はギフトを通してその小さな幸せを大切な人におすそ分けしてみてはいかがでしょうか。

ライター:ちこちゃん

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